第22話 龍と世界樹
街に着くと衛兵が敬礼していた。
「ご苦労様です、ジン殿!」
「あ、お疲れ様でございます。」
敬礼なんて、なんかこそばゆい。
魔導車を収納し、門をくぐる。
夜は冷えこむだろうと衛兵に火焔石をひとつ出してあげた。
ストーブのようなオイルランプのようなものに入れる。
「こんな高級な物、良いのですか?」
「いつもご苦労様です。気にしないでください。」
「あ、ありがとうございます!」
ものすごく感謝されてしまった。
そんなに高級なのか?
それにしても、オフロードの運転はやたらと疲れたなぁ。
ギルドは明日顔を出すことにしよう。
そういえば今日からエリーとユアンもマイグラトリーバードに部屋を取るって言ってたな。
通うのはめんどくさいらしい。
なんなら、小さな家でも買うか?
家って刻印にできるのかな??
まあ、ゆっくり考えよう。。
…………………
翌朝、エリーが起こしに来た。
「おはよー、今日はギルド?」
「そうだね、火焔石の納品と次の依頼確認かな。ユアンは?」
「魔導車の整備をしたいって言ってたわ。砂だらけだしね。横の空き地に出しておいてって。」
「了解。じゃあ、行こうか。」
ギルドに到着した僕らはいつもの猫耳さんに声をかける。
「火焔石の依頼の納品なんだけど、、、」
「あ、火焔石はここじゃなくて、裏の倉庫前で確認しますので、そこまでお願いします。私もすぐに行きます。」
受付の横から通路を通り裏口のドアを開ける。
周りを高い塀に囲まれた裏庭のような先にまたしても堅牢な煉瓦造りの倉庫があった。
「こっちでーす!」
倉庫の前には猫耳さんが建築現場で見るような金属の荷台付きの一輪車を用意していた。
「ここにお願いします。火焔石はどこですか??」
「あぁ、ここにあるよ。」
「??」って顔をする猫耳さんに、収納刻印のアイテムボックスを披露した。
「!!、えっ!?そこに??」
一輪車に山ほど火焔石をとりだした。
「こんなに大量なんですか??コレとんでもない量ですけど。。。」
「え、そうなの?あと5倍くらいはあるけど、、、」
「な、5倍?!、いくらギルドでもそんなに買い取れませんよ!この出していただいた量でもギルド長の承認がいるくらいの金額です。」
エリーが現場で同じようなことを言ってたようなきがする。
「だから言ったじゃない。こんなに採掘して持ち帰る人いないって!」
また怒られてしまった。
どうやら採掘する人も持ち帰る方法がなく、大抵10個が限度だと。
確かにこんな熱量のもの、無理だよな。
収納刻印であればなんの問題もなく運べる。
コレは確かにチートかも知れない。
報告を聞いてギルド長が倉庫前まで来てくれた。
「ほほぅ、こりゃたまげたのう!」
顎髭を撫でながら火焔石を眺め、ギルド長は呆れたように笑っている。
「ジンよ、流石「彫師」じゃなぁ。空間魔法まで使えるのか。」
「依頼の最中に獲得しました。コレです。とても便利ですね。」
「ほう!わしも話には聞いておったが、見たのは初めてじゃからのう。」
そんなに珍しい能力なのか。
まだまだ用途はありそうだ。
「報酬の準備にはもう少しかかるじゃろうから、エリーと上に来んか?少し話もあるしのう。」
応接間に通され、サーバスさんも加わった。
サーバスさんがエリーに聞く。
「エリー、ジン殿との依頼はどうだった?」
「規格外ですね。驚かされますし、どうかしてますよ。」
「そうか、しかし「祝福持ち」とのパーティ結成など羨ましいくらいだぞ。」
「まあ、私の能力も底上げしてもらいましたから感謝はしてますけど。。」
「エリーはもともと強いよ。僕はサポートしただけだし。」
「いやいや。2人とも素晴らしい事じゃ。そんな君たちにのぅ、、、」
とギルド長が本題に入る。
「隣町での話が入ってきた。エリーは知っておるじゃろうが、隣町とはエルフの里でのう。世界樹を祀る長寿の民じゃ。魔力の扱いに長けており、その昔は人族と対立しておった。今は交易も盛んで、魔械師をこちらから貸し出しておったりと友好関係にある。」
エルフ!いるんだ。まさにファンタジー。
「そのエルフの里の中心に先程申した「世界樹」があるのじゃが、その葉が散り始めたのじゃ。調査をしたところ樹の上層に魔物が巣を作っておることがわかり、その魔物がドラゴンのようなのじゃ。」
「ドラゴン?!」
「ドラゴンには聖龍と邪龍がおっての。今回の件は後者のようなのじゃ。今までも聖龍に関しては何度も世界樹に巣を作っていたのじゃが邪龍は初めての事らしい。」
「そうなのですね。」
「先日の女神の水源地も魔力の豊富な場所じゃったが此度の世界樹もしかり。何か関係があるような気がしてのう。」
「またバルマスが関わっている?!」
「その可能性もあるのう。もしバルマスと名乗るものの力が働いておれば無関係ではない。とにかくエルフの里は友好関係にある。ギルドの名においてお主らに調査及び討伐を依頼したいのじゃ。」
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