第21話 ミリオンボルケーノ

魔導車に気づいたアントライオンは砂煙のなかから左右7個づつ、14個もの赤い目を光らせ一直線にコチラに向かってくる。


「一旦距離をとって魔導車を収納する!」

一つ砂丘を越え、魔導車を消した。


「僕が真正面に出る!エリーとユアンは回り込んで両サイドから遠距離攻撃を!」


「了解×2」


アントライオンの正面200メートル程の砂丘の上に立ち、右肩に魔力を込める。

「昨夜の見張り中に彫りたてホヤホヤだけど、

やってみるか!」

『不死の王冠!!』


砂漠に巨大な魔法陣が現れ、百体を超えるスケルトンたちが湧き上がってきた。


「スカルウォール!」

ガチャガチャと音を立ててスケルトンたちが組み合わさり砂漠に白い壁が現れる。


回り込んだ左のユアンと右のエリーがその光景を観ながら両サイドの位置につく。


「うげ、気持ち悪っ!なにあの壁?!」

エリーは引き気味だ。


「骨、キモい。」とユアン。


その気持ち悪い壁に勢いよくぶつかるアントライオン!

ドーーンッという衝撃と共に一瞬動きを止める巨体!

押し合うアントライオンと壁。

そこへ左サイドから無数に連射された風魔法を纏う矢と、右サイドからは炎の連弾。

アントライオンに当たりながら炎と風による燃える竜巻となりアントライオンの断末魔が響く。一瞬で勝負はついた。


レベルアップの声が聞こえる。

そして期待していた刻印の追加がレベル上昇の効果として加わった。

『収納の刻印』だ。

はじめに聞いていた『空間』の刻印のひとつだろう。

ありがたい。


2人と合流し、焦げたアントライオンの元へ。


「近くで見ると大きいのね。。。あの壁は水源のヤツの能力??気持ちワルいわねぇ、、、まあ、味方だからまだいいけど。」


「骨、キモい。この虫も、キモい。」


「ははっ、ひどい感想だね。。でも炎の竜巻は素晴らしい威力だったよ。」


フフンと鼻を鳴らす2人。

いいコンビになってきたじゃん。

2人もレベルの上昇があったらしく、僕同様に体力も回復したらしい。

レベルアップと同時に回復は共通なんだな。



その後キラーアント、サンドワームを蹴散らし、アントライオンを2体撃破した。



半日ほど砂漠地帯を走破し灼熱の赤く燃える岩山に辿り着いた。ここはミリオンボルケーノと呼ばれる火山帯だ。

ここからは徒歩で行くしかないか。



「なんて暑いんだ。」


「私に任せて。」

唯一、登れそうな細い道の先頭にエリーが剣をかざして歩き出す。

少しずつ魔力を込めていくと剣の周りから無数の細かい氷を放散している。

赤い岩たちが氷で冷めて黒い色に変わっていった。

 

「コレなら少しは歩きやすいでしょ?」


「魔力の微調整がここまでできるんだな。」


「エリー、上手。」


奥に進むにつれ、エリーの氷でも黒くならない真っ赤な石がチラホラ現れた。

「アレが火焔石ね。10年は冷めないらしいわよ。」


その時ユアンがシンプルな疑問を投げかけた。

「でも熱い。どうやって持ち帰る?」


「ちょうどいい刻印が手に入ったんだ。少し待ってて。」

僕はその場で『収納の刻印』を腕に彫った。


魔力を込める。

目の前に空間が裂けたような穴が現れた。


「コレがアイテムボックス的なもの??凄いな。」

恐る恐る中を覗き込むと異次元の空間が広がっていた。


持参した大きなペンチのような火挟でその異次元にかなりの量の火焔石を入れた。


「よし!依頼達成だな。」


もと来た道を戻り、魔導車を起動した。


そもそもこの火焔石、生活には欠かせないものらしく、煮炊きからお風呂やシャワーの湯沸かしまで需要が多く高価で取引されているらしい。冬場には暖房としても使用されると。

そうだ、ユアンに頼んでこの魔導車にも冷暖房システムをつけてもらおう。


「ユアン、この魔導車にも冷暖房システムは付けれるのか?」


「うん、「火焔石」と「氷結の華」があれば可能。」


「氷結の華?」


「うん、いつまでも溶けない氷の花。」


そんなものもあるのか。その採取もこの先の目標だな。


日も暮れかけた頃、街の明かりが見え始めた。

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