第19話 玉座のバルマス

ドンドンドンドン!!


翌朝、宿の部屋のドアをけたたましく叩く音で目が覚めた。


寝ぼけ眼でドアを開けるとエリーが飛び込んできた。

「ちょっと!魔導車が無いわ!盗まれた!」


「え?!、うん、、あー、ココにあるよ。」

と刻印を指差す。


「は?え、えー!」

確かにエリーにもユアンにも言ってなかった。


落ち着いたエリーがまじまじと魔導車やレイピアの刻印をみる。

「本当に便利な天賦よね。なんでもそんなふうにできるの?」


「まだまだ実験中かなぁ。」


「コレって私にも入れれるのかな?」


確かに最初の説明では他人にも刻印可能だって言ってたな。試しにレイピアやブーツにも入れてみたが成功してる。やってみる価値はある。

「入れてみる?痛いけど。」


「、、、、うん。お願い。」


相談の結果エリーの苦手な炎魔法を左手に、得意だが詠唱を省略するために剣に水魔法を入れる事にした。水魔法にエリーの魔力操作で氷魔法にできるという。原理は一緒で練り上げ方が違うらしい。


「イッターい!」

まあ、そうでしょうよ。よくわかります。


「はい、おしまい。」


数分で施術は終わり、エリーの剣に移る。


「結構痛いのね。。。」


「まあ、慣れてくるよ。そのうちね。」


エリーの剣にも入れ終わった頃、ユアンも到着した。やっぱり「魔導車!盗まれた!」と言いながら(笑)。

今日はギルドへユアンのパーティ加入登録とクエスト依頼の様子を見に行く予定なのだ。


……………………


ここはとあるダンジョン最下層。

仄暗い最深部には玉座があり、そこには見た目10代と思しき少年が鎮座していた。しかしその禍々しさは周りの参謀らしきモノたちの比ではない。

少年はワイングラスを片手につぶやく。


「ワイトキングは失敗したようだね。まあ、あんな腐りかけじゃあ当然だけど。」


その少年のすぐ横にいたものが片膝をつき頭を下げる。

「申し訳ございません、バルマス様。」


「いいよ、まだまだ楽しめそうだ。できればアイツらを早く召喚したいけどね。」


…………………


ユアンの登録が終わり、依頼の貼ってあるボードに目を向ける。パーティ専門の依頼にはやはり難易度の高いものが多い。


「この中でもとりあえず採集もので肩慣らししながら行こうか?」


実はエリーの刻印の後、ユアンのガントレットタイプのクロスボウにも風魔法の刻印魔法を施したのだ。エリーとユアンの練習も兼ねて★2の火焔石採集にエントリーした。

ちなみにガントレットタイプのクロスボウはユアンが腕につけるタイプの鉄の爪とハンドガンタイプのクロスボウを合成、調整して魔力で動作が可能。折りたたみ式の自信作らしい。

さすが[魔械師」。


火焔石はここから南に向かい、砂漠を超えた火山にあるとのこと。

魔導車での遠出を兼ねた慣らし走行もできて一石二鳥だ。

何かのトラブルでもメカニックが同行してるし心強い。


よし、3人パーティでの初クエスト開始だ。


衛兵のいる門を出て魔導車の刻印に魔力を込め、魔導車を出した。

衛兵達は何事かと驚いていた。

まずは僕が運転席へ。


「エリー、ユアン、行くよ。」


「しゅっばーつ!×2」


ヴゥゥゥンという起動音と共に少しの振動が体に響く。

快調に魔導車は走り出した。


道といっても砂利や土なので、四駆型の意味がわかった。しかし驚くべきは思った以上にサスペンション技術が素晴らしいことだった。

ユアン曰く、磁力と空気圧を使用し、細かい調整はお得意の魔力らしい。魔力恐るべし。


しかもその魔力のおかげなのか、起動を停止すると車体はローダウンし、乗り降りもラクラク。高級車だよ、ホント。

どうやら車体が下がるのは乗り降りだけではなく防御時に下からの爆風などで転倒しないようにする意味もあるらしい。最高だ。


半日ほど走っただろうか?周りの景色が変わり

木々が少なくなってきた。

砂漠が近いのだろう。


「今日はこの辺りで一泊しよう。」

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