第16話 アンドレ商会

「あらエリーちゃん、久しいじゃないの?」


「こんにちは。ご無沙汰しています。」


「え、ご無沙汰なんだ。」


「この間は、美味しいお弁当ありがとうございました。」


どうやら女将さんはその昔、エリーの実家、ヴィンセント家で働いていたらしい。


「お嬢様だったんだな、、」


「そんなんじゃないわよ。」


ランチを食べ、女将さんも交えて話に花が咲いた。

「馬車ならギルド御用達のアンドレ商会かねぇ。」


「やはりそうよねー。あのオヤジ、なんか気に入らないのよねー。」


「そうなのか?」


「足元見てるというか、腹黒そうというか。その割に、上にはヘコヘコしてる感じ?」


あー、なんとなくイメージは湧いた。


とにかくアンドレ商会へ行きましょうかね。


繁華街から少し外れた商店街のそのまた裏側にアンドレ商会はギルドに負けない門構えで存在していた。


「デカいな」


「そりゃそうよ、大きな取引はほぼ独占化してるもの。」


なるほど、、その豪胆な商売が伺える建物だ。


「今日は何の入用ですかな?」


いかにも成金染みた口髭の小太りが奥から出てきた。

「馬車を購入したくて、、アンドレさんはいらっしゃいますか?」


「ワタシがアンドレです。お客様の顔を見ないと落ち着かないものでね。」


裏を返せば従業員を信用できないタイプってことだな。


「冒険者ですかね?身分証を拝見したいのですが、、、」


身分証を差し出すと片眼鏡でまじまじと眺めた。


「なんと、あのジン様ですか?水源を救った?」


「まあ、はい。。」


「ワタシもいるんですけど。」


「おやおや、エリー嬢ではないですか?そんな後ろに隠れて、貴方も英雄でしたかな?それにしても嫌われてますねーワタシ。お父上はお元気で?」


「ええ、お気遣いどうも!」


なんだか穏やかではない様子。。。


「それよりもバール爺やは元気にしてるの?」


「そりゃもちろん、我が商会の有能な[天賦職技術者]ですからねー!」


「くっ!」と苛立つエリー。


すると、奥からオイルまみれのスチームパンクな小柄のドワーフが現れた。

「エリーお嬢様!久しゅうございます!」


「バール爺!」


「知り合いか?」


「えぇ、元はウチで働いてくれてたのよ。彼は[魔械師]の天賦持ちよ。」


「魔械師?」


魔械師とは魔力を動力に動く機械を作り、整備する天賦だという。


アンドレが近寄り僕の手を取る。

「ジン様のおかげで我が商会も助かっておりました。魔械具の最終調整にはあの水での部品洗浄が必要でして、、、何かご入り用でしたら是非ともこのアンドレに御用命ください!」


「相変わらず、[一定の人たち]にはご丁寧ね。」

エリーは機嫌が悪そうだ。

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