第13話 隠れた心

マイグラトリーバードへ帰ってきた。


「おかえりー。でかい花火を上げたようだねぇ。」


炎魔法のことだろうか?

面食らった顔をしている僕にジョイおばさまは続けた。


「あんた、すごい音と火柱だったよ、水源地ごと吹っ飛ばしたんじゃないかって近所の人らと笑ってたんだ。でもみんな感謝していたよ!ありがとうねー。」


「いえ、仲間が怪我をして、、、。今度からはもっと気をつけます。」


「水源を救った功労者が何しょげてるんだい?アンタはこの街を救ってくれたんだから、胸を張りなさい!」


「はい、ありがとうございます。」


部屋に戻り、風呂に入った。

体を拭き、姿見の前で左胸に手を当てた。

ここにしよう。どんな手を使っても誰かの血が流れないように。たとえそれが魔物のスキルでも。



そして同じ頃、診療所。

「もう綺麗に治ってる、、、。」

(あんな態度取って、、私、無様過ぎる。)

自分の勝手な対抗意識に羞恥と落胆が入り混じり、なんとも言えない不甲斐なさを噛み締めるエリー。

(アイツ、あんなアタシを見捨てなかった、、、気を抜いたのはアタシの落ち度なのに。)

エリーはその羞恥と落胆の陰に隠れた仄かに甘い何かにまだ気づいてはいなかった。



翌朝、宿のエントランスにはウィッチズサパーの妖艶女将が笑顔で待ち構えていた。

「あ、おはようございます」


「おー、遅いお目覚めだねー英雄さん!」


「どうしたんですか??こんな早くから?」


「君にとっておきのデリバリーだよ!」


なんと早朝から水源に出向き、あの名物料理を仕込みお弁当にして持ってきてくれたのだ。


「早く食べて欲しくてね。張り切って参上したって訳!」


「やけに多くないですかコレ?」


「いや、聞くところによるともう1人英雄様が居て、あのエリーちゃんらしいじゃないの?」


「あ、なるほど。よくご存知ですね。」


「ギルド長のゼム爺に聞いたのさ、一応アタシの親戚でね、まあ、それでなくても街ではアンタらの噂でもちきりさ。」


「あはは、、そうなんですね。ありがたくいただきます。」


「あの子まだ診療所だろ?持っていって2人で食べなさいよ。」


「ありがとうございます」



コンコンッ

「起きてるか?入るぞー。」


「ちょ、え?待って!」

ガチャ

そこには着替え最中の天使がいた。


…………………


腫れ上がった頬を撫でながら女将のお弁当を広げる自分にまだ怒り心頭のエリーが聞く。


「突然来てコレは何なの?!」


女将の努力を丁寧に説明し、蓋を開ける。

部屋一面に香ばしい香りが漂って本当にキラキラ光って見えた。

「うゎー!!なんていい香り❤︎」

先程までの御怒りはどこへ?


「僕たちのあの討伐で、街の人々は本当に感謝してくれてるんだ。すごく嬉しいし、逆にありがたくて、、、、でもね、昨日の夜は全然喜べなくて、、、今、エリーが元気になってくれて初めて依頼完了したなって思ったんだ。」


「!!っ」

エリーは顔が赤くなり、昨夜は影を潜めていた甘い気持ちの正体に気づいてしまった。


「は、はやく、たば、食べましょ!」


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