第6話 飄々としたギルド長
「あのー、[彫師]なんですけど、彫師用の服なんてないですよね?」
キョトンとした顔でこちらを見る店主。
まあ、そうでしょうね。
「[彫師]、、ですか。聞き慣れないご職業ですね。ということは技術職の方で?」
そういえば彫師とは何になるのだろう?
魔法も扱うし魔法使い?うーむ。
「えぇと、少々魔法なども使いますかね、、」
「なるほど、魔術師系の方でしたか。身分証などございますか?」
あ、アレね。金縁の身分証を見せた。
「えぇと、「ジン グレゴール」様、、、なんと、天賦職のお方でしたか。勉強が足りず失礼致しました。」
お、出た、[天賦職]。
「お好みのお色などございますでしょうか?ご予算などもございましたら私めがいくつかご提案して差し上げますが。」
これはありがたい。迷わなくて済む!
これなら今日中にギルドにも行ける、、はず。
まあ、舐められない程度の衣装は必要だろう。
「じゃあ、黒系で。予算は、、、あまり気にせずに!」
「左様でございますか。ありがとうございます。しばしお待ちください。」
待つこと数分。
「こちらなどはいかがでしょうか?防火、防水に優れた漆黒シルクのものです。縦糸にはアラクネの糸を使っておりますので強度も十分かと。少々お値段はかかりますがこの街でこれより上等で良い品はございません。」
見た目は薄手のハーフコートと黒の軍服のような装束感。
おぉ、なんかかっこいいぞ。
「お値段は?」
「はい、こちらです。」
差し出された紙には[120,000ガル]と書かれていた。
一瞬金額に怯んだが、これにしておこう。
「こちらをください。ここで着替えてもよろしいでしょうか?」
「もちろんでございます。お買い上げありがとうございます。」
とりあえず身なりは整えた。
ギルドへ向かってみよう。
城塞を思わせるような石造りの壮観な建物。
威圧感を具現化したらこんな感じなのだろうか。
受け付けらしいカウンターが扉の先に見える。
「はーい、次の方どうぞー。」
いくつかある窓口で職員らしき猫耳女性に呼ばれた。
「猫耳」だ。昨日から今日までの間に所謂「獣人」という種族には遭遇してなかった。
なんか嬉しい。
「おにーさーん、どーぞー」
「あ、はい」
「今日は、何用で、、というかココは初めて?」
ここというかギルド自体、この世界にも詳しくない。こんな時は「天賦」頼りパターンが有効だろうか?
「あのー、登録とかしたほうがいいのかな?」
「ハイ、まだなのでしたらお願いします、身分証あります?」
「あ、お願いします。」身分証を出す。
「ありがとうございます、ん、、、コレは、、、少々お待ちください!!」
小走りで奥へ向かって行く猫耳。
5分後には何故か応接間の様な部屋でお茶を出されていた。
部屋の奥の重量感がある観音開きの扉がガチャリと開いた。そこから出てきたのは飄々とした小柄のお爺さん。
対面にヨボヨボと座った。後方にはいかにも強そうな髭面の戦士の様なオッサンも。
「お待たせしたのう。ワシがこのギルドのギルド長、ゼムじゃ。」
「ジンと申します。」
「いきなりじゃが、お主は祝福の契をもっておるそうじゃのう。」
「はい、珍しいのですか?」
「ふむ、まあのう。という事は神界の門を経てこの地へ来たのじゃな。」
「えーと、まあ、そうなりますかね。というか神さまには会ったんですけど、この世界のこともよくわかってなくて、、、」
「ふむ。まずは[祝福の契]からじゃな。ワシも祝福持ちに会うのは2人目じゃ。1人目は90年ほど前かの?」
な、、2人目??
「2人しかいないんですか?!」
「いやいや、他にも幾人かはおる、、らしい。」
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