第5話 彫師と洋服屋

炎魔法ね。多分これだな。


自分の左手人差し指の先には小さな「炎」の文様の刺青、[刻印]が。


まだ未使用で練習すらしていないですけど。

あれ?なんかやる気出てる?

あー、また悪い病気か。

正義感。


思い出せよ、それで一回死んでるからね。


「ご馳走様です」

「ありがとうね、またおいで」

代金を支払い、店を出た。


繁華街から宿に戻る途中、少し周りを見渡す。

武器屋、防具屋、薬屋、雑貨屋、いろいろある。小屋のような店から石造りの屋敷みたいな店まで多種多様だ。

まあ、明日だな。


宿に戻ると、「ジョイおばさま」はまたにこやかに迎えてくれた。

「おかえりなさい、味はどうだった?」

「最高でした」


部屋に戻り、試してみたいことがあった。

魔法だ。

部屋の中なんで消去法でいくと、残るのは回復魔法かな。


回復魔法はハートのような形の刻印だ。

なんとなくだけど左手を胸に当てた。

「これでいいのかな?」

魔力を流す。自分の手から暖かさのような波動を感じ、樹々の若葉が陽の光を浴びたような光を放った。

おぉー。強いて言うなら緑に光る電気ストーブに近づいたような感じ。

今の所、傷もないのでよくわからないけど、疲れは取れたような?

まあ、発動の仕方はわかった。気がする。


実践あるのみだな。

また色々試していこう。

なんだか今日一日で色々あったなぁ。

ベッドに入ってすぐに意識は遠のいた。


ここは天界

『あの子、ちゃんとやっていけるじゃろうか。「彫師」とはなぁ。丁度300年振りくらいかのぉ」

そこには懐かしむかのような、期待しているかのような表情があった。


そして翌日のマイグラトリーバード。


「ん、んぁーー、よく寝たなぁ」


翌朝は気持ちいい目覚めだった。


朝の支度を終え、髪を整え、姿見の前に立つ。

まずは服装と装備かな。

昨日見つけた商店街へ行こう。

ギルドも行きたい。


「よし、出発だ。」


昔から、というか子供の頃から服装選びが苦手だ。ファッションに興味がないわけではないのだが機能性、見た目、気候、流行り、コスパ。などなど気にし始めたらキリがなく、あれやこれやで時間だけが過ぎていく。

その割に雑貨屋などには一日中いても飽きない。書店などもそうだ。

結果、僕の買い物は時間がかかる。


まあ、生きてく世界も変わった事だし少し大胆に決めてみるのも悪くないか。。。


などと考えていると洋服屋を見つけた。

「すみませーん、どなたかいらっしゃいますかー?」

声をかけると奥の部屋から紳士的な店主が現れた。

「ご来店ありがとうございます、本日はどのようなものをお探しでしょうか?」


こんな身なりの自分はもっと訝しげな顔をされると踏んでいたがどうやらその心配はないようだ。

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