第3話 刻印棘

「一泊素泊まり100ガルだよ。」

人の良さが滲み出るとはこの事だろうか?

例えるなら「みんなのお母さん」

ふくよかなシルエットに優しそうな笑顔。

「お願いします」「何日か連泊で。」

自然と連泊決意してしまった。

「ここに名前を書いておくれ」

名前か。あの身分証のような物には

「ジン グレゴール」となっていた。

僕の名前だよな?

説明足りないんだよなぁ。

そしてよく考えたら『神お姉さん』が初めに与えてくれたお金。2,000万ガル。

多くね?コレ。

宿屋が100ガルよ。20万連泊できるよ、しないけど。

まあ、どんな世界かもわからんから節約はしておくつもりですけど。


「ふう。」

ベッドに横になりながら頭の中の天啓様にアクセスを試みる事に。


[要件をどうぞ]


お、きたきた。えーと、

[[彫師の能力を教えてもらえますか]]


[『彫師』…刻印の理解に長けており、その熟練度に応じた刻印魔術を使用可能です。]


ほうほう。なるほど。じゃあ、

[[刻印魔術とは?]]


[『刻印魔術』…魔道具「刻印棘」を使い彫師が本人、または他人の肌に刺青と魔力を彫る。魔法、武具、防具、など多岐にわたる「刻印」を扱う。熟練度が増せば空間及び時間すら刻印が可能。]


空間や時間??どういう事だろう?

とにかく刻印棘が必要って事だな。

[[刻印棘はどこで手に入る?]]


[右手の掌をご覧ください。その小さな刻印に魔力を流してください。]


気づかなかったが親指の内側にペンのようなマークがある。タトゥーなのか?

魔力?こうだろうか?

右手に集中すると小さな竜巻のようなものの中にかなり太めのペンのようなものが出た。

僕にはセンスがあるのだろうか?

一発だ。


[ジン様は特別な『祝福の契』を受けていますので、効果に加算値がございます]


あ、そうですか。

それはそうと刻印、知らないけど。


[「刻印リスト」思い浮かべてください。]


刻印リスト、、、

すると頭の中に幾つかの文様が浮かび上がってきた。


回復魔法、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法。


簡単な文様だ。


[この文様が、高度術式になるほどに複雑化していきます。]


なるほど。

とりあえずすべて入れておくか。


右手に刻印棘を握り左手の指先それぞれに五種の刻印を施した。

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