第2話 祝福の契

頭の中の声はとても耳心地がよかった。


「あのー、なんか頭の中に声が、、」

『あぁ、それか。それは天啓の声じゃな』

「天啓の声?」

『うーん、まぁ、お主の世界の言葉で言うのならばサポート役?的な感じかのう。』

『答えられる事なら頭の中で呼び掛ければいつでも答えるじゃろう』

ほう、そりゃ便利だけど。


「それと「彫師」って言われたんですが?」

『また奇異な天賦を、、、』

『説明が遅れたが天賦とは死んだ時の影響が色濃く反映されるのじゃが、お主心当たりは?』


あ、谷間のタトゥー。


「あります、ハイ。」

そこ影響しますかね。まあ、最期の眼福か。


『そろそろ時間じゃの、ではゆくぞ!」


不意に足元の床が黒くなったと思いきや

穴が空いていた。

「うぅわぁぁぁぁー!」



気がつくと森の中だった。

「夜、なのか?」

見上げると木々の間から青い月と赤い月。

「どう考えても地球じゃないなぁ。」

現実感ていうのは曖昧なものだ。

今はコレがありえないとは思わない。

服装もこの世界のものだろうか、なんとも色気のない地味なものだ。

肩からはショルダーバッグのような皮袋にフラップのついたような物。

中になにかはいってはいるが、、、。


街はあるのだろうか?


まずは寝床をなんとかしたい。腹も減ってきた。

木々を抜けると道に出た。

道の先にはお約束の如く街明かりが。


なんとかなりそうだ。


どれくらい歩いただろう。見えてはいたがそこそこの距離だったらしい。

歩きながら自分の持ち物を調べてみた。

多分お金であろう金貨と銀貨銅貨など。

陶器のような素材の身分証だろうか?金の縁がついている。

読めるぞ。なになに?


『祝福の契』?


え、『彫師』って書いてあるじゃん。

大丈夫なのだろうか?


まあ、なるようになんとかって事で。


予想通り街の入り口には衛兵の詰め所のようなものが門の両サイドにある。


「止まれ!ん?見ない顔だな?」


肩幅が倍にも見えるほどの肩当てのいかにも衛兵だと感じさせる兵士が2メートルはありそうな槍で道を塞ぐ。


「通行証はあるか!?」

通行証?初耳です。

「いえ、ないです。あ、コレなら」

先ほどの金縁陶器を差し出す。


「なっ!?天賦職の方でしたか?!申し訳ございませんでした!」

「どうぞお通り下さい!」


おお。なんか通れたぞ?

『天賦職』?

なんとなく全員が『天賦』持ちではないようだな。

衛兵たちに宿屋の場所を聞き、少し胸を張って歩き出した。

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