拝啓、悪霊にしかなれなかった元英雄へ

千華

第一章 少女の日常

第0話 序章

ジリリリリリリリ

ああ鳴ってる鳴ってる。あ、目覚まし時計が。

天井と窓と壁から朝日の差し込む古びた一室。

机の上や床にはぶあっつい本や脱ぎっぱなしの服が散らばっている。

使うものはまだ仕舞わない。というこの部屋の主人の意向だ。

その結果がこれだというのに。というかその思考自体がアホすぎる。



そんな部屋にとっくに朝だというのに小さな寝息を立てている少女がいた。

光が反射して輝く桃色の髪を持つ、少女。

そして同時にこの国の最強兵器だ、とは誰も予想できないだろう。

・・・すぐには起きそうにない。起きるわけがない。



じゃあ僕の主人が起きるまで、少しこの世界の紹介をするよ。


ここはエルナード王国。周囲の国々から魔法大国と恐れられている魔法使いの国。

大きな時計台を象徴に、古びているが趣のある建物が建ち並ぶ、美しい国だ。


この世界は今なお大戦中。目的は領土のため。と表向きには言われているが、実際はどうか分からないのが現状だ。


どの国も戦いにおいて得意な分野がある。その中でも我がエルナード王国は魔法を最大の武器としているんだ。

魔法使いって他国には存在しない人種なんだけど、この国にはなぜか多い。いくつかの属性に分かれた魔法使い達が国民に存在している。その中でもうちの主人は、


って話しこみすぎた。そろそろ起こさないと学校に遅刻してしまう。


ああ、僕の主人はこの少女。背も小さく童顔な少女。歳は内緒。

エルナード魔法学校の三回生で、皆からは虹翼こうよくと呼ばれている、魔法使いの少女だ。そしてこの国最強の・・・

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