第128話:謎の部屋

「てめぇ、いったい何をしてたんだ! ってかここはどこだよ!」


 恭介に詰め寄っていく国親だったが、恭介は肩を竦めながら普段通りに答えていく。


「まあまあ、国親。僕たちも何がなんだか分からない状況なんだ」

「んなわけねぇだろうが!」

「本当なんだ、国親」


 恭介と国親のやり取りに、竜胆が口を挟んでいく。


「ゲートコアを回収した直後、俺たちだけが普通とは違う転移でここに飛ばされたんだよ」

「どういうことだ? 二重扉の攻略は終わったんだろう?」

「そのはずなんだけど……な、なんだ? 宝玉が、動いてる?」


 手の中にあった宝玉がカタカタと震えだしたことに気づいた竜胆は、手を開く。


「うわっ!」


 すると、宝玉が一つずつ、それぞれの目の前に飛んでいった。


「……僕は赤?」

「……私は青だ」

「黒ね」

「あぁん? なんだ、この黄色い宝玉は?」


 恭介には赤、彩音には青、影星には黒、国親には黄。そして竜胆には――


「虹色の宝玉……どういうことだ?」


 五つの宝玉に、五人のプレイヤー。


「もしかして、それぞれの色ってことなのか?」

「だけど竜胆さん、色とはいっても私たちに何か関係があるんでしょうか?」

「赤、赤……よく分からないなぁ」

「私は分かる」

「俺もだな」


 竜胆、彩音、恭介が首を傾げている中、影星と国親は色が何に関係しているのかが分かっていた。


「な、なんだって!?」

「何なんですか、影星さん!」

「国親も分かったのかい?」

「まあ、推測の域を出ませんが……」

「推測も何も、確定だろう。この色はスキルを表しているはずだ」


 国親の答えに、それぞれが目の前に浮かんでいる宝玉を見つめる。


(虹色の宝玉がスキルって……どういうことだ? 俺のスキルはガチャだけど、他にもいろいろと獲得しているから、虹色ってことなのか?)


 竜胆のスキル【ガチャ】は規格外のスキルだ。

 スキルはプレイヤーに覚醒した時に授かるものであり、基本的には一つ、二つ以上のスキルを授かるプレイヤーは数えるほどしかいない。

 さらに言えば、後天的にスキルを獲得できるなど聞いたことがなかった。

 しかし、そう考えると影星のスキル【影魔法】が黒というのは、なんとなくスキルと色の関係性が分かりやすいが、他の三人はどうだろうか。

 恭介のスキル【戦意高揚】はある意味で赤と言えるかもしれない。何せ戦闘特化のスキルなのだから、イメージとしては赤でも納得できる。

 彩音のスキルは二つあり、【全体指揮】と【風林火山】なのだが、青と聞くと【風】が最初に頭に浮かんでくる。

 だが、複数あるスキル効果の中の一つだけを示すなんてことがあるのだろうか。

 そう考えると、彩音の場合は【風林火山】ではなく【全体指揮】に宝玉が反応しているのかもしれない。


「国親のスキルはどうなんだ? 黄色に関係しているのか?」

「言ったろ? 俺のスキルは縮小だ。色に関係とか、ねぇに決まってる」

「だったらどういう……まさか、ヴォルテニクスか?」


 自身のスキルではなく、武器のスキルなのかと驚いた竜胆に、国親はヴォルテニクスを見つめながら頷いた。


「雷は黄色のイメージ強いだろう? それとだ、扉を見てみろ」


 国親が宝玉から扉へ意識を向けると、竜胆たちは視線を真っ白な扉へ向けた。


「……色が、変わってる!」

「それぞれの色の扉に入れってことだろう。ったく、まだ何かあるのか? 面倒くせぇなぁ」


 頭をガシガシと掻きながらそう口にした国親だったが、ふと竜胆がジーっと見ていることに気づく。


「……なんだよ?」

「国親って、最初は怖い奴だと思っていたけど、冷静に状況を分析していたり、恭介のことを心配していたり、実はめちゃくちゃいい奴だったんだな!」

「あぁん? 誰がこいつの心配をしていたって? ふざけんじゃねぇぞ!」

「いや、だって、恭介と話し合いをするって――」

「それを本人の前で言ってんじゃねぇよ、新人野郎が!」


 竜胆が悪気なくそう口にすると、国親は顔を赤くしながら怒鳴り出した。


「僕も国親とは面と向かって話をしたいと思っていたんだ。扉を出たら、時間を作って話し合おう」

「……ちっ。仕方ねぇから話を聞いてやるよ。んじゃあ俺は、黄色の扉に行ってくるわ」


 居心地が悪くなったのか、国親は頭を掻きながら大股で歩き出す。


「それじゃあ僕は赤の扉だね」

「私は青か」

「黒ね」


 それぞれが宝玉の色と同じ色の扉へと歩き出す。

 竜胆も同じで、虹色に輝く扉の前に移動した。


「……さて、鬼が出るか蛇が出るか」


 一度深呼吸をした竜胆は、全員の方へ視線を向ける。

 それは竜胆だけではなく、他の面々も同じ行動を取っていた。

 目が合うたびに頷きあい、全員の意志を確認する。


「いくぞ!」


 そして、竜胆の掛け声に合わせてそれぞれが扉を開いた。

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