第120話:デビュー戦
扉の中は情報通り、迷宮型のフィールドになっていた。
「俺たちは二人だ。分かれて攻略は愚の骨頂、面倒だと思うが一緒に行動するぞ」
「分かった」
国親の指示に返事をすると、二人は迷宮の攻略を始めていく。
恭介や彩音や影星、他にも最初に攻略へ乗り出したプレイヤーがいたはずなのだが、その痕跡が見つけられない。
それどころか、戦闘の痕跡すら見当たらなかった。
「……おかしいな」
「だな。何も起きてないはずがねぇんだが……あぁん?」
竜胆の呟きに国親が答えていると、通路の奥の方から何かが近づいてくる気配があった。
「気づいたか、国親?」
「あぁ。だがこれは……おいおい、マジか?」
感じられた気配は一つ、二つではない。あまりの多さに国親は表情を若干だが引きつらせてしまう。
「見えるぞ!」
竜胆の言葉から一秒と経たずして、通路の曲がり角から種族問わず、無数のモンスターが姿を現した。
「あまりにもバラバラじゃないか?」
「んな冷静に分析している場合か! いくぞ、新人!」
「あぁ、分かってる!」
先に飛び出した国親を追い掛けるようにして、竜胆も駆け出していく。
「んじゃまあ、一番槍をいただきだ! 出ろ――ヴォルテニクス!」
国親が叫んだと同時に、彼の右手には今まで存在しなかった長大な槍が現れた。
「雷撃一閃! どらああああああああっ!!」
顕現させたヴォルテニクスを真横へ振り抜くと、バチバチと音を弾けさせながら雷の斬撃が飛来していく。
突っ込んできた先頭のモンスターが雷に打たれて黒焦げとなるだけでなく、雷は近くのモンスターへ波及していく。
「数で押せば勝てると思ったか? 甘すぎるぜ、扉さんよお!」
そう叫びながら国親は高く跳び上がると、先頭が崩れたことで進行速度が落ちていたモンスターの群れのど真ん中へ着地した。
『ゲギャギャギャギャ!』
「黙れ、ザコ共が! 雷鳴爆発!」
今度はヴォルテニクスを振り下ろし、地面を叩く。
すると、叩いた部分の地面から雷鳴が轟き、モンスターの三半規管を狂わせてしまう。間近で聞いたモンスターはそれだけで絶命するほどの爆音だ。
「俺も負けていられないな! お前のデビュー戦だ。頼んだぞ、デュランダル!」
平衡感覚を失ったモンスターめがけて、今度は竜胆が突っ込んでいく。
抜き放たれたのは、新たに竜胆の相棒となった不滅剣デュランダル。
目の前には首を左右に振りながら平衡感覚を取り戻そうとしている獣型のモンスターがいた。
「はああああああああっ!」
大きく踏み出した一歩のあとに、デュランダルで袈裟斬りを放つ。
自分でも思っていた以上に滑らかに、鋭く体が動いてくれる。
斬った感触はあったが、モンスターの皮を、肉を、骨を斬っているにかかわらず、ほとんどの抵抗を感じなかったデュランダルによる斬撃。
さらに竜胆の体は進化したスキル【上級剣術】によって流れるように動き、近くにいたモンスターを次々と切り捨てていく。
その動きはまるで竜巻のようで、一振りするごとにモンスターの死体が増えていき、吹き飛ばされていった。
「あれで新人か? はは、こりゃあ先輩として、Bランクプレイヤーとして、負けていられねぇなあ!」
国親に竜胆が触発されたのと同じく、その逆も起きていた。モンスターから見れば絶望以外のなにものでもなかっただろう。
外側からは竜胆が竜巻のようにデュランダルを振るい、内側からは国親が雷を伴い大暴れしている。
この場にいる全てのモンスターの本能が、たった二人の人間を相手にして、勝てないと思わされてしまっていた。
『……ブ、ブモオオオオッ!!』
最後尾にいた一匹のモンスターが逃亡を図ると、次々にモンスターが来た道を引き返していく。
「んな、てめえら! 逃げてんじゃねえぞ!」
「追い掛けるぞ、国親!」
「おうよ!」
まさかモンスターが逃げるとは思わず、国親が呆れたように叫ぶ。
そこへ竜胆が追い付き、追い越しながら叫ぶと、国親も駆け出した。
星4の扉に入って早々、竜胆と国親は追撃戦を開始した。
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