第102話:二重扉

 やや肩透かしにあった感じの竜胆だったが、ここでスキル【ガチャ】が発動する。


【二三回のガチャによりレア装備【コボルトパラディンのコート】を獲得しました】

【スキル熟練度を獲得しました。各種スキルの熟練度に反映いたします】

(スキル熟練度だって!)


 今の竜胆にとって、レア装備よりも熟練度を獲得できたことが何より嬉しかった。


【スキル【共鳴】の熟練度が100%に達しました。上位互換のスキル【死地共鳴】に進化します】


 そして、新たなスキルを獲得した竜胆は武者震いをした。


「その顔、どうやらいいものが当たったみたいだね」

「本当ですか! 竜胆さん!」


 顔に出ていたようで、恭介からそう言われた竜胆はすぐに表情を引き締め直すも、笑顔の彩音が興味津々に近づいてきた。


「……レア装備も当たったんだが、熟練度も当たったんだ」

「そうなのかい? ということは、共鳴が進化した?」

「あぁ。スキル【死地共鳴】ってのに進化したよ」

「死地共鳴? ……聞いたことがないですね」


 新しいスキルを伝えるも、彩音は首を傾げている。恭介も同じような行動をしており、どうやら初めて聞くスキルのようだった。


「スキル効果は……以前の共鳴の効果はそのままで、複数の敵に囲まれている状況だとさらに身体能力が上がる、って書いてある。なんとまあ、ガチャにピッタリなスキルだな」


 敵を倒すことで発動するスキル【ガチャ】を有効的に使うには、多くの敵を倒す必要がある。

 一匹ずつ確実に倒すこともできるが、効率を考えれば一度に複数の敵を相手取る方がいいに決まっており、そうなれば敵に囲まれるリスクも当然だが増えてくる。

 そんな時にスキル【死地共鳴】が発動してくれれば、生き残れる確率が大きく跳ね上がるはずだ。


「これは相当良いスキルだね」

「すごいですよ、竜胆さん!」

「それと、レア装備だが……これだな」


 ちょうど良いタイミングで魔法陣からレア装備の【コボルトパラディンのコート】が出てきた。

 茶色の柔らかく、頑丈な体毛に覆われたコートであり、とても大きい。

 しかし、見た目に反して非常に軽く、使い勝手は良さそうに感じた。だが――


「……大き過ぎませんか?」

「……うーん、確かにねぇ」

「……こいつは、要改善だな」


 竜胆たちが身に着けるにはあまりに大きく、コートの裾を引きずってしまう。

 いくら軽くて丈夫だとしても、動き難くては使えない。


「まあ、装備の改修はよくあることだし、このコートが良い物だってことに変わりはないさ」

「それもそうだな」

「さーて! それじゃああとはダンジョンコアを回収するか、破壊して扉の攻略は完了ですね!」


 これでひと段落といった感じで大きく伸びをした彩音がそう口にしたことで、竜胆たちは周囲を見渡しダンジョンコアへと続く道を探す。


「……見当たらなくないか?」

「……そうですね」

「……どこかに隠されているタイプなのかもしれないね」


 恭介がそう口にしたのをきっかけに、竜胆たちはそれぞれで新たな道を探し始めた。

 壁を叩き、床を蹴りつけ、怪しいところがないかを探していくが、なかなか見つからない。

 どうしたものかと竜胆が考えていると、ふと協会ビルでの会話を思い出した。


『――間違いなく星4だと記されている。しかし、ここまで来ると疑わざるを得ない』


 Cランクパーティでも攻略に失敗している星4の扉の存在、そして疑われたとある可能性。


「……二重扉?」


 竜胆がそう呟くと、恭介と彩音の耳にも届いたのか一斉に振り返った。


「二重扉だって?」

「あ、いや、その可能性もあるのかなって思っただけだよ。それに今までで数えるくらいしか確認されていないわけだし、連続で発生するなんてことは――」

「ね、ねえ、竜胆さん、矢田先輩!」


 恭介の声に竜胆が苦笑いしながら答えていたが、遮るようにして彩音が叫んだ。


「ゆ、床が、揺れていませんか?」

「扉の中で、地震だって?」


 彩音が恐る恐る呟い、恭介が警戒を強める。


 ――ドンッ!


「うわっ!」


 直後、大きな揺れが竜胆たちを襲うと、床に大きな亀裂が広がった。


「嘘でしょ!?」

「早く集まるんだ!」

「間に合わない! 床が――崩れるぞ!!」


 新たな道を探していたせいで、竜胆たちは離れた場所に立っていた。

 バラバラになることを避けるため集まろうとしたが間に合わず、竜胆たちは崩れた床から下層へと一気に落下してしまった。

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