第100話:ガチャから出たアイテム

 それから竜胆たちは攻略を順調に進めていった。

 新人プレイヤー用の扉で大量のモンスターを討伐してきた竜胆にとって、星5の扉のモンスターの数には不満が残ったものの、恭介や彩音からすれば結構な数のモンスターを倒していた。


「竜胆君は最初の扉からイレギュラーばかりだったからね」

「そもそも、プレイヤーに覚醒したのがスタンピードの時でしたもんね」


 一人でも十分に倒せると判断したのだろう、竜胆は積極的に前に出ており、恭介と彩音は少し離れた場所で残党狩りを行っている。

 これも気配察知から竜胆と恭介の二人で判断したことであり、それがピッタリはまった状況だ。


「よし、終わったな」


 そんな話をしていると、竜胆が戦っていたモンスターを全て片付け終わった。


「お疲れ様、竜胆君」

「お疲れ様です!」

「そっちもな」

「それで、竜胆さん! ガチャはどうでしたか!」

「……彩音なぁ、俺より興奮してないか?」


 労いの言葉からすぐにガチャの結果を聞いてみた彩音を見て苦笑しながらも、竜胆は彼女の要望に応えることにした。


「レアはなし。熟練度も当たらなかったよ」

「えぇ~! そんな~!」

「ガッカリしないよ、彩音さん。それでも他のアイテムや装備は当たったんだろう?」

「そうだな」


 呆れたように恭介が呟くと、続けての確認に竜胆が当たったものを見せる。


「……えっ? これって、レアじゃないんですか?」

「中級ポーションは結構貴重だよ。それに効果は小さいけど、スクロールもあるじゃないか」


 スクロールとは、魔法を封じ込めた巻物型のアイテムだ。

 一度しか使えないものの、魔法が使えるプレイヤーは少ないため、スクロールはどのパーティでも重宝されている。


「僕たちのパーティには必須のアイテムだよ、竜胆君!」

「そうですよ! 普通ならレアアイテムですよ、レアアイテム!」


 興奮する恭介と彩音を横目に、竜胆は思案顔を浮かべる。


「……星の数、もしくはモンスターの強さによって、手に入るアイテムや装備の質が変わるってことなのか?」


 竜胆の仮説が正しければ、単純に弱いモンスターを大量に倒すだけでは、スキル【ガチャ】をより活かすことができなくなる可能性が出てきてしまう。


「……より良いアイテムや装備を手に入れたければ、より強いモンスターを倒せ、ってことか」

「ガチャは規格外のスキルだけど、なんでもかんでも特別レアなアイテムや装備が手に入るってわけじゃないんだね」

「なんでしょう、少しだけホッとしました。弱いモンスターからもすごいアイテムが手に入るんだったら、本当に規格外すぎて一緒にいるのが釣り合わなくなっちゃいますからね」


 彩音は頬を掻きながら、安堵した様子でそう言った。


「まあ、何も当たらないハズレだってあるわけだしな。ってか彩音も俺を人外みたいな扱いにするんじゃないよ」

「じ、人外とまでは言ってないじゃないですか! ……まあ、それに近いところまでは行っていると思いますけどね~」

「はいはい、二人とも! この先にはもうボスモンスターがいるはずだし、気を引き締め直そうね!」


 雰囲気が緩み過ぎないよう、恭介が手を叩いて声を上げる。

 それを見た竜胆と彩音はすぐに真剣な面持ちとなり、視線を奥へと続く通路へ向けた。


「ボスモンスターの気配まで分かるものなんですか?」

「今回のボスは気配を消したりしていないからね。それに、消そうとしても消せないくらい強烈な気配を発している、ていうことでもあるかな」

「だが、イグナシオほどの威圧感は感じないな」


 彩音の問い掛けに恭介が答えていたが、その横で竜胆がボソリと呟く。


「確かにね」

「なら余裕じゃないですか!」

「とはいえ、油断は禁物だ。全員で一気に叩こう」


 イグナシオより弱そうだとしても、相手はボスモンスターだ。

 弱いという確証もないまま油断して戦っていれば、一瞬にして殺されてしまうかもしれない。

 竜胆は油断せず、それでいて安全に、そして最短で攻略するべく、全員で叩く選択をした。


「よし、いくぞ!」


 こうして竜胆たちは、星5の扉を攻略するべく、ボスモンスターが待つフロアに足を踏み入れた。

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