第99話:現状確認

 熟練度の話が出たこともあり、竜胆は現時点での各スキル、その熟練度を確認することにした。

 事前に周囲の気配察知を行っており、近くにモンスターがいないことを確認している。


(そういえば、コロッセオを攻略してからというもの、きちんと確認していなかったな)


 星6の扉の攻略、イグナシオとの激戦、エリクサーを獲得してからは特に時間が経つのが早く、鏡花が助かってからも忙しなく動いていた。

 今回の攻略が終わったら、まとまった休みを取ってもいいかもしれない、そんなことを考えながらステータスを開いた。


(最初はスキル【ガチャ】だけど、これはレベル2になって、獲得できるスキルが4つに増えた。これに関しては熟練度みたいな目安がないから、どうやってレベルを上げればいいのか分からないな)


 レベルが上がるごとにスキルの獲得数が増えるのであれば、積極的にレベル上げをしたい。しかし、そのレベルを上げる方法が分からない。


(考えられるのは見えないところで熟練度が溜まっているか、それともガチャの回数なのか、くらいだろうけど……まあ、ここは攻略を進めていればいずれまた上がるだろう)


 分からないことをいつまでも考えているわけにはいかず、竜胆は次に各スキルへと視線を移していく。


(スキル【中級剣術】の熟練度が63%、【共鳴】が82%、【鉄壁反射】が11%、そして【魔法剣】が……0.3%か)


 初めて魔法剣を使ったのだから熟練度が低いのは当然のことだ。

 しかし、実際に0.3%という数字を目の当たりにすると、進化させるまでどれだけの時間が掛かってしまうのか、途方に暮れてしまう。


「ガチャが熟練度が当たってくれればありがたいんだが……正直、レアアイテムや装備よりも当たってない気がするんだよな」


 確率だけを見ればレアアイテムや装備よりも、熟練度の方が当たりやすいはず。

 それにもかかわらず当たった記憶が薄いのは、討伐特典で装備やアイテムが当たっているからだろう。


「……でもまあ、結局はモンスターを大量に倒すのが手っ取り早いって感じだな」

「どうだった、竜胆君?」


 竜胆が一息ついたのを見て、恭介が声を掛けた。


「スキルの進化はまだまだって感じだな。一番早そうな共鳴でも82%だし」

「共鳴が進化したらどうなるんでしょうね?」

「確かに、共鳴というスキル自体聞いたことがなかったし、それの上位互換か……うーん、分からないな」


 ソロで活動するつもりだった竜胆からすると、恭介や彩音と一緒に行動していること自体が驚きである。

 共鳴が進化した時、さらに身体能力の上昇値が高くなるとなれば、二人から離れられなくなるかもしれないなと内心で思ってしまった。


「そう考えると、星6のコロッセオは竜胆さんにとって、あまり良い扉ではなかったんですかね?」


 大量にモンスターを倒すことで発動するガチャであり、上がる熟練度だ。口をついて出た彩音の言葉に、竜胆は首を横に振る。


「いいや、それはない。イグナシオを倒して魔法剣を獲得できたし、何よりエリクサーを手に入れて鏡花を助けることができたんだ。一番の目的が達成されたんだから、良い扉じゃなかったなんてことはないさ」


 竜胆の説明を聞いて、彩音も恭介も笑顔で頷いた。


「となると、今回の扉に大量のモンスターがいれば、もしかすると共鳴が進化するかもしれないね」

「普通だと敬遠する内容ですけど、竜胆さんがいる時は違いますね」

「面倒を掛ける。その分、ドロップ品の買取り額や当然山分けにするし、レアアイテムや装備が出たら渡すから、許してくれ」


 前半は申し訳なさそうに、後半は本音ではあるが冗談っぽく口にした。


「本当ですか! やったー!」

「僕まで竜胆君の恩恵に預かっていいのかな?」

「恭介がいなかったら、俺は今頃ここにはいない可能性もあったんだ。それに、俺たちはパーティなんだから、当然じゃないか」


 彩音は嬉しそうに、恭介は申し訳なさそうにしていたが、竜胆はみんなに受け取る権利があるのだと口にした。


「よーし! そうと決まればガンガン進んで、積極的にモンスターと戦いましょう!」

「目的は竜胆君の熟練度を上げることだからね?」

「分かってますって! るんるるーん!」


 上機嫌な彩音を見て、恭介は苦笑を浮かべる。

 今が扉攻略中とは思えない雰囲気に、竜胆は二人の存在に秘かな感謝をしていた。

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