第22話:熟練度
「はあっ!」
『ゲビャッ!?』
竜胆の鋭い一撃が、岩場に生息していたモンスター、サンドリザードの首を落とした。
ガチャはハズレてしまったが、着実に下級剣術の熟練度は上がっていた。
「とはいえ、まだ65%かぁ。三時間近く狩り続けて5%しか上がらないとなると、今日で100%までいかせるのは難しいかもしれないなぁ」
昨日はガチャでスキル熟練度が当たっただけでなく、ゴーストナイトの上位種を倒して獲得したスキル【下級剣術】が熟練度に変換されている。
岩場でゴーストナイトが出てくるかも分からない現状では、ガチャでスキル熟練度を当てなければ進化は見込めないと竜胆は思っていた。
「それに、だんだんと戦闘で上がる熟練度の数値も少なくなっている気がするんだよなぁ。マジでガチャで当たってくれないと厳しいぞ」
そう口にしながら次のモンスターを探し始めた竜胆は、くまなく岩場を探索していく。
すると、枯れた木の根っこが外に垂れ下がった場所で洞窟を発見した。
「へぇ、こんな場所も扉にはあるんだな。……これは、お宝の匂いがしてきたな!」
扉の中には隠された部屋があると言われており、そこにはたいていの場合で異世界の宝が隠されている。
とはいえ、ここは新人プレイヤー用の扉であり、すでに多くの新人プレイヤーが足を運んでいるはず。何より協会の人間が新人用にとくまなく探索を済ませているだろう。
「……まあ、期待はせずにモンスターを探してみますか」
というわけで、竜胆はお宝を探すというよりも、洞窟を縄張りにしているモンスターを探すことを目的として足を踏み入れた。
中は真っ暗、というわけではなく、壁や天井、地面に生えている苔が光源となって薄暗い程度で、なんとか視界を確保できている。
光る苔に目を奪われながらも、竜胆は慎重な足取りで洞窟の中を進んでいく。
(……何かいるな)
ヒタヒタと、何かの足音が壁や天井に反響して聞こえてきた。
一度戦闘を行えば、戦闘音が洞窟内に響き渡りモンスターに気づかれるだろう。
多くのモンスターと戦いたい竜胆だが、それでも大量のモンスターと一度に対峙したいわけではない。
先ほどよりも慎重に、音を立てないよう細心の注意を払いながら、足音が聞こえた方へ進んでいく。
(……いた)
声には出さずにモンスターがいたことを確認し、疾風剣の柄に手を掛ける。
『……フシュルルルル』
相手はサンドリザードと同種のモンスターでフレイムリザード。
戦闘になれば口から炎を吐き出して攻撃してくるモンスターだ。
(気づかれて炎を吐かれたら、音とか関係なしに光で他のモンスターにバレちゃうな)
気を引き締め直した竜胆は、フレイムリザードが後ろを向くのを待ち続けた。そして――
(いまだ!)
地面を蹴りつけての全力疾走。
足音に気づいたフレイムリザードが弾かれたように振り返ったが、その時にはすでに竜胆は疾風剣を鞘から抜き放っていた。
――ザンッ!
居合抜きで一閃、フレイムリザードは何もできないまま首を刎ね飛ばされ、力なくその場に倒れた。
「……ふぅ」
小さく息を吐き出したあと、ガチャが発動する。
【ガチャでスキル熟練度を10%獲得しました】
「マジか! ……っと、やばっ!」
まさかスキル熟練度が当たるとは思っておらず、竜胆は思わず声をあげてしまった。
すぐに口を両手で覆い周囲に視線を巡らせたが、モンスターが近づいてくる気配はない。
ホッと胸を撫で下ろすと、今度は予想外の展開が待っていた。
「……待てよ……待て待て、待ってくれよ?」
ガチャが発動し、スキル熟練度が当たった――否、当たってしまった。
当たりが出たということは、スキル熟練度とはいえ魔法陣が顕現してしまう。
ということは、魔法陣の光で洞窟内が照らされるということだ。
「う、嘘だろおおおおっ!」
魔法陣の光が洞窟内を照らし、その光が洞窟の奥へと広がっていく。
これはマズいと思った竜胆が聞き耳を立てると、奥の方から間違いなく無数の足音がこちらへ近づいてきていた。
「……これは、ひとまず逃げるべきだな!」
こうして竜胆は大勢を立て直すため、全速力で洞窟の外へと駆け出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます