第13話:プレイヤー証と扉
「お待たせいたしました。こちらがプレイヤー証になります」
「ありがとうございます」
プレイヤー証を受け取った竜胆は感慨深げにそれを眺めていると、しばらくして青葉が口を開いた。
「プレイヤー証ですが、紛失しないよう注意してくださいね」
「もちろんですが、何か理由があるんですか?」
「稀にですが、プレイヤー証を偽造して悪用する方もいらっしゃいますので」
詳しく聞いてみると、プレイヤー証にはそもそも偽造防止策が講じられている。
しかし、その偽造防止策を突破して悪用する者が存在するのだと青葉は口にした。
「プレイヤー証の偽造防止策には、パスポートなどの技術が使われいると聞いています。ですが、絶対に偽造されないということもないのです」
「日本の技術は高いと言われていますけど、確かに絶対はありませんからね」
「はい。日本の偽造防止策はレベルが高いからこそ、偽造されてしまうと本物だなと疑われないことも多いそうなんです」
レベルが高いことはいいことなのだが、そこを利用されてしまっているのだとも説明してくれた。
「なので天地様、絶対に、ぜええええったいに、紛失だけは気をつけてください」
「……ね、念を押しますね。分かりました、気をつけます」
「それじゃあ続いてなのですが、これから時間はありますか?」
まだ何かあるのかと竜胆が首を傾げると、青葉はニコリと笑い答えてくれた。
「プレイヤーになったばかりの方へ、星一つの扉をご案内しているんです」
「星一つの扉って、また現れたんですか?」
「いえ、違います。こちらの扉はプレイヤー協会が管理している扉なんです」
「協会が管理? ……そういえば、噂で聞いたことがあるような」
基本的に扉が現れた場合、扉を攻略して異世界を形成する核を破壊し、扉を消滅させることが推奨されている。
しかし、極稀に貴重な資源が大量に採れる扉が現れることもあり、それらの扉に関しては攻略はしても核を破壊することはせず、スタンピードが起きないよう協会が管理し、資源確保に努めていた。
「資源だけではなく、新人プレイヤーへの指導も兼ねた扉運営をしている場所もあるんですよ」
「なるほど、そこで扉の内側を経験させようってことですか」
「それだけじゃありませんが、おおむねその通りですね。天地様の場合はすでにモンスターとの戦闘経験もありますし、他の扉をご紹介することもできるのですが、いかがなさいますか?」
「いえ、新人プレイヤー用の扉でお願いします」
竜胆は一切考えることなく、新人プレイヤー用の扉を選択した。
「よろしいのですか? 大半のプレイヤーは別の扉に行きたいとごねたりするんですが……」
「そうなんですか。でも俺は新人プレイヤー用の扉がいいですね、試したいこともありますし」
「試したいこと、ですか?」
スキル【ガチャ】の検証ができていない竜胆としては、イレギュラーが発生するかもしれない扉よりも、協会が管理している安全性の高い扉の方が都合がよかった。
だが、スキルについてを簡単に教えるべきではないということも理解している。
「下級剣術だけでどれだけ戦えるのか、それとプレイヤーになったばかりの自分の限界を確認したいってところですかね」
だからこそ竜胆はプレイヤー登録の書類のスキル覧には【下級剣術】の名前を記載していた。
「確かに、限界を超えたまま扉の攻略に進んだりしたら、どこで足元をすくわれるか分かりませんもんね」
「そういうことです」
「分かりました。では、こちらを持って移動をお願いいたします」
納得した青葉が渡してくれたのは、プレイヤー協会の社印が押された許可証と、扉の場所を示した地図だった。
「ここは……港の倉庫街ですか?」
「こちらの倉庫街は協会が管理しているのですが、そのうちの一つに新人プレイヤー用の扉があるんですよ」
「そうなんですね、全然知らなかった」
多くのプレイヤーがこの場所を訪れているはずなのだが、全くそう言った話を耳にしたことがなかった竜胆は不思議に思ったのだが、それには単純な理由があった。
「実は、先ほども申し上げた通り、ほとんどの新人プレイヤーはそんな場所に行く必要はないって断っちゃうんですよ。そして、行ってくれるプレイヤーは基本的にまじめな方が多いので、黙っていてくださいと伝えると秘密をきちんと守ってくれているみたいで」
「なるほど、そういうことですか」
真面目な人ほど協会の指示に従ってくれ、そうでない人ほど新人プレイヤー用の扉に向かうことを拒否してしまうので、その場所自体がどこにあるのかすら分からない、という構図だった。
「バレたとしても協会の社印が入った許可証がないと入れないので問題はないと思うんですが、避けられるなら問題なんて起こしたくありませんし、天地様も黙っていていただけると幸いです」
「言いませんよ、安心してください」
「ありがとうございます。それでは、いってらっしゃいませ」
「はい、いってきます」
こうして竜胆はプレイヤー協会をあとにすると、その足で港にある新人プレイヤー用の扉へ向かった。
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