第二話 ブッチャー
「なっ、なんなんだあの人形?!」
「なんで攻撃が効かないんだ…」
「打てッ打てーッ!!」
時は8時間前に遡る…
「あー客が来ねぇ…」
「そのおかげで酒とタバコが進むわ」
フィギュアとドールが
怠そうに話す。ドールに至っては
酒を飲んでいる
「…そういやグリムは?」
「今デート中、さっきも聞いたでしょう?」
「そうだったか?そういや恋人(主人)持ちだったか…」
ダラダラと過ごしていると
それを吹き飛ばすが如く
ドアが乱暴に開かれる
「たっ!助けてください!」
「うわああっ?!ビックリしたァッ?!」
「…何事?私ダラダラするのに忙しいんだけど?」
「とっ、ともかく落ち着いて!何があったんです?」
「に、人形が…攫われたんです!」
ドールとフィギュアがお互いに
顔を合わせる
「で?どこで誘拐されたんです?」
「店舗を出てすぐです!とりあえず来てください!」
「分かりました、ドール!グリムに連絡を。先に二人で行くぞ!」
「…はいはい……」
〜ネメシス州 zoltax maiden3号店〜
「なるほどな…ここで誘拐されたって事か」
「はい…突然黒い車が止まったと思ったら急に…その後追いかけようとしたら突然身体が動かなくなって…」
「身体が動かない?」
「はい、何かの魔術だと思います」
「警察へ連絡は?」
「それが…他の所の対処のせいで遅れると…」
「…おそらくギャング関係だろうな。よし!ドール、ブッチャーに連絡を!」
「分かったわ、姉様ならこの事件いけそうね」
「あの、誰ですその人…?」
「あぁ、うちの『最強』の人形ですよ。おそらく戦闘になる」
そう言いながらフィギュアが
とある場所へ電話をする
「…俺だ、人形が拐われたんだが……あぁ、そこに居るんだな?分かった、報酬?そっちの手伝いで頼む、今金がねぇんだ…それで頼む…」
「よし!見つかった!全員合流次第向かうぞ!」
「久しぶりに身体を動かせるわね、こうでないと張り合いが無いわ…」
首をコキコキと鳴らしながら
ドールが話していると後ろから
グリムと美しい灰色の狐のメイドが
やってくる
「おっ、意外と早いな…こっちだ!」
「ちょっと?!なんでブッチャーと一緒な訳ェ?!」
開口一番グリムが文句を垂れる
「私もこんな雑魚と一緒なのは心外ね、一人でやれるわ」
「おいおい!喧嘩すんのは後からにしてくれ!グリムはブッチャーのストッパーになってくれ、やり過ぎるからな」
「もうっ…そういうのはドールにしてよー!」
「良いだろ?なんだかんだでお前ら二人が安定してんだ。ともかく行くぞ!」
グダグダと文句を垂れながら
人形の拐われた先へ向かう
〜スーサイド空港 貨物エリア〜
「本当にココに居るんでしょうね?」
「あぁ、その証拠にギャングの奴らが武装して何かを見張ってやがる…つかなんでお前も来るんだよ?危ねぇだろ…」
「私が彼女の主人なんですから!角で隠れてるんで早く見つけてください!」
「おいおい…とりあえずこっそり隠れながら…」
そう言い欠けるとブッチャーが飛び出す
「ん?誰だ?!」
「動くな!動かなければ命だけは助ける!」
「あら?『命を助ける』だなんて随分優しいのねぇ?」
そう言った瞬間彼女のスカートから
マシンガンを二丁取り出す
そしてギャングの二人に
マシンガンを乱射する
「ぐわあぁあっ?!」
「…あっ、アイツは?!報告しないと!」
一人逃げるとブッチャーが
ギャングに駆け寄り押さえ付ける
「…一人逃したわね」
「おいブッチャー!お前のせいで状況ヤバくなっただろ!」
「あら?楽しくなったの間違いでは?」
まるでその状況を楽しむかの如く
フィギュアに煽り散らかす
「ともかく!皆で固まって進むよ!ブッチャーとドールは先頭そこのヒト二人は後ろ!アタシは真ん中で二人の指示出す!分かった?!」
「さぁ?分からないわ?先行くわね」
「ああっ!テメェ!先行くなクソ人形ォ!」
グリムの指示をあからさまに無視し
先へと走り出す
その後をグリムが追い始める
「あーあ…行っちまった…」
「いいんじゃない?あの二人なら全滅出来るだろうし?」
「とりあえず急ぐそ…アイツらがやり過ぎない為にも……」
「なんか不安だなぁ…」
「とりあえず押さえてた奴は縛っとくか」
「お、俺…殺されてない?」
「当たり前だ、ありゃゴム弾だ。さ!早くアイツらを追うぞ!」
ギャングを縛り上げると
仕方なく三人は駆け出す
「おい!早く人形を乗せろォ!」
「抵抗してんじゃねぇ!サッサと乗れ!」
そこには数十人程の人形が
コンテナに乗せられていた
その人形には殴られた痕や
腕を切りつけられた痕があった
「オラァそこォ!サッサとしねぇか!」
「サッサとしないとどうなるのかしら?」
ビックリした様に幹部と思われる
ギャングが後ずさる
「だっ、誰だテメェ?!」
「さぁ?名乗る名前は無いわ」
「ボス!大変です!『血濡れのブッチャー』が現れましたーァッ!」
「あら?私の為に名乗ってくれた輩が居るわね?」
そう言うとそのギャングの
脳天にマシンガンでゴム弾を打ち込む
「ぐわあっ?!」
あまりの痛さに
ギャングがうずくまる
「野郎共!戦闘だァッ!」
ギャング達が人形をコンテナに詰め込み
戦闘態勢に入る
「ケッ…雑魚が…」
「撃てェーッ!撃ちまくれ!」
弾丸の雨がブッチャーに襲いかかる
はずだった…
ブッチャーの一定の位置に
弾丸が入ると弾丸が赤い粉に変わる
「あら?粉が飛んできたわねぇ?」
笑顔でギャング達に微笑みかける
「これ以上来ないなら……」
「わ た し か ら い く わ よ」
笑顔から悪魔の様な微笑みに変わる
「ひっ…」
「に、逃げろ!」
その微笑みに圧倒された
ギャング達が散り散りになって逃げ始める
「逃がさない」
高速で逃げ出すギャング達に
駆け寄り至近距離から
マシンガンで撃ち込む
「う、うわああああ!」
錯乱したギャングの一人が
マシンガンを乱射する
「あらあらぁ…雑魚が頑張ってるわねぇ…」
彼女は赤い粉を浴びる様に受ける
「これ以上私の手を煩わせないで」
ギャングのみぞおちに弾丸を撃ち込む
「目じゃないだけマシだと思いなさい…後は貴方だけね」
正に死屍累々だった
恐怖で怯えた者、うずくまり痛みに藻掻く者
その光景を見て恐怖で泣き出す人形達
ギャングのボスは恐怖で支配されていた
「逃げ…逃げな…ければ…」
彼の足が動かない
「残りは貴方ね」
ブッチャーがゆっくりと近づく
「や、やめ…」
一歩、一歩、また一歩と歩み寄る
「貴方には特別に素手でトドメを刺してあげましょう」
マシンガンを捨てた手から
あまりにも鋭過ぎる爪が鈍く光っていた
ブッチャーの手が届く範囲まで近いた
そっとギャングのボスの頬を撫でる
「これから地獄へ堕ちる気分はどう?悲しい?虚しい?まだ生きていたい?」
ダラダラと涙と鼻水を垂らしながら
ゆっくりと頷く
「そんな事聞いてないけど」
彼女の冷たい答えと共に
無常にも振り下ろされる
「止めろブッチャーッ!」
駆けつけたグリムが彼女の手に
パンチを喰らわせ軌道を変える
ギャングのボスの後ろには
美しい巨大な切り口が見えていた
「あっぶないわね!今アタシごと切ろうとしたでしょ!」
「あらぁ?貴方が消えてくれると思ってまとめて切ろうとしたのだけれど…」
「ざっけんな!殺されてたまるかクソが!」
二人が言い合いをしていると
ようやく後ろの三人が追いつく
「おい!死人は出してねぇだろうな?!」
「えぇ、悲しいけど」
「悲しいけどじゃあないでしょ?!危うくこっちもケガする所だったんだから!」
「…まぁ死人出してねぇならいいよ…」
「とりあえず早く探そうぜ!」
「あぁあそうだった…目の前の光景に圧倒されてた…」
それから…
「ああっ!マスター!」
「良かった…良かった……!」
「他の人形達は戻った感じかなこれで…」
「とりあえずこれで全員のはずだ」
「まさか警察に全員主人の所に帰せって言われるなんてな…疲れた…」
コンテナに寄りかかりながら
タバコを吸い始める
「で…ブッチャーの調子はどうだ?」
「ブッチャーならそこでメンテナンス中!全く…無理すんだから…」
そこにはライトを口で咥えながら
ブッチャーのメンテナンスをする
ドールの姿があった
「寝てたら美人なんだけどねぇ…あの性格なんとかなんないの?」
「無理だろうなー…」
「ったく…普通機械人形ってさ、主人の命令とかちゃんと聞くイメージなんだけど…本来はあんなんなの?」
「いや、本来は軍で働いてるから命令は絶対だ。だがブッチャー、アイツだけは違う。おそらくドール同様何かがあったんだろ…」
「ドールちゃんと同様に…ねぇ…」
月明かりに照らされたブッチャーの姿は
赤い粉であたかも血塗れの様な姿だった
「よし、これで終わりよ。」
ドールがそう言うと背中の
メンテナンスハッチを閉め
ゼンマイを巻き始める
巻き終わるとキリキリと音をあげながら
彼女が目を開ける
「ん…良く寝たわ…さて、帰りましょ」
「やーっと帰れるよ…早く帰ろ…眠い…」
「あぁ、もう深夜だしな…」
「明日の予定は?三人共」
「サバゲー」
「買い物」
「デートの続き!」
「て事は明日一人かよォ…」
「居るじゃない?あの二人が」
「あぁ、アイツらか…もう帰って来てる頃だな…でもなぁー…」
「うだうだ言っても仕方ないでしょう?とりあえず私達三人は休みだから、よろしく」
頭を抱えるフィギュアを横目に
それぞれ話をしながら帰る
三人であった…
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