第16話 次の階層とそこで見つけたもの
「簡単に言うと龍撃砲はな、龍の魔力をビームにして放出してるんだ」
:なにそれ
:龍!?
:龍の魔力って?
「……? 龍……龍の魔力ぅ!?!?」
「ん? ああ、過去に龍を討伐したことがあってな。その時のブレスを解析して俺なりに再現してみたんだよ」
:討伐!?
:単独で討伐できるものだっけ?
:そんなわけ……
「討伐しなくとも深淵に行きゃそこら辺におるぞ?もちろん討伐もしたが」
「深淵……魔窟すぎますね」
:怖すぎ
:龍がそこら辺にいるのか……
「まぁ、それは置いといて。胸部の核魔力炉から全身に流れる回路を開いて、循環しつつ増幅、その後、胸部アーマーへ集中しそこで龍の模擬魔力へ変換。一方向へ放つんだ」
「つまり……?」
「めっちゃ強いビームが出る」
:つっよ
:わけわからんことしてるけど火力がバカなのはわかった。
「それじゃ、そろそろ下に向かいますか!」
桃瀬がそう言い立ち上がる。
俺も腰を上げ、次向かう先の道を見る。
「そうだな……あれ? 下へ降りる道ってあんなところにあったか?」
なんとも言えない違和感を覚えた。
ブラッティキングウルフ討伐直後に見た景色と何かが違ったのだ。
しかし、何度見ようとも無機質な壁があるだけだった。
「どうでしょう……私もはっきりとは覚えていないので……」
:何か変わったことが?
:わからん
:どうだろ
「とりあえず進んでみればわかるか」
「そうですね。行きましょう」
「ああ」
:気をつけて!
:慎重にね
そして俺たちはさらに下の階へ足を踏み入れた。
◆◆◆
「あれ、こんな場所でしたっけ?」
階段を降りていると桃瀬がそう呟いた。
「そうなのか? 俺はここに来たことがないから分からないが……」
「こんなに長い階段なんて無かったはずです」
確かに階段が長い。もう入ってきたところは見えなくなり、下を向いても終わりが点のように小さい。
「確かに、ダンジョンにしては異様な階段の長さをしてるが……ルーファス、魔力反応はどうだ?」
《特にありません。ただの階段だとしか考えられません》
「そう……ですか」
少し納得できないような返答だったが、特にそれ以上言うことなく階段を降り続ける。
:気を付けるんやで
:確かに別の配信で見たことあるけど普通にダンジョンが続く感じだったな
:ボスが違ったことが何か影響してるのかな?
「それはあるかもしれないな」
《そうですね。ボスが別というのはそういうダンジョンでない限り、起こり得ないことと判明していますから。影響を与えていてもおかしくないかと》
そして最後の段を降りる。目の前には木製の扉があった。
「ようやく階段から解放される!!!!」
喜びの声を上げる桃瀬は扉に手をかけ、開いた。
俺も続いて扉の奥へ行く。
「なんでしょう? 研究所……?」
「明らかに人工物だな」
そこは研究所と呼ぶのが相応しいような場所だった。
真っ直ぐ正面に伸びる通路。左右の壁際には棚がずらりと並び、割れたビーカーやフラスコ、何かを入れてたであろう透明な入れ物が散見される。
しかし、蜘蛛の巣が張り巡らされ置かれた机も埃まみれであり、この場所が一切使われていないのは明白だろう。
:なんだここ
:未発見区域……?
:戻った方がいいんじゃ……
「未知の場所を探索する……ワクワクしますねぇ」
「だねぇ。こりゃあ、戻るなんて有り得ないっすよぉ」
真似をしてみる。
「黒瀬くん。向こうの奥、光ってない?」
前を指差し言う。
通路の奥、うっすらと黄緑っぽい光が見えた。
「確かに、光ってるな。行ってみよう」
周囲に気を配りつつ、発見した明かりへ向けて歩を進めた。
そして近づくにつれ全貌が明らかになる。
「うわー、大きな装置」
《魔力反応は無し。培養ポッドのようですね》
壁に隣接するように置かれたガラス張りの円柱。ガラスが埃まみれになっており、中はのぞけないが黄緑色の明かりはその周囲から出ていることが分かった。
付近には培養ポッドへ伸びる管があり、中へ液体を入れることができるようだ。
「黒瀬くん、こっち来てー」
観察していると桃瀬から呼ばれた。
「ここ見て」
そういい、培養ポッドの土台を指差す。
土台には桃瀬が手で拭ったのか擦った跡がついていた。
目を凝らしてよく見てみると、ネームプレートがあることが分かった。
「『人造兵器アッシュトルテ』……?」
刻まれている文を読み上げだ。恐らくこの中に入ってるか入ってたものだろう。
「これがこの中に入っているのか?」
《まだ明かりが付いているという事は可能性はあるでしょう。》
「そうだよな」
そう考え、培養ポッドを覆っている埃を払ってみる。
中は透明の液体で満たされており、肌色の脚が見えた。
「ひっ、人……!?」
後ろから覗き込んでいた桃瀬が驚いて声を上げたようだ。
「いや、人ではないようだぞ」
培養ポッドにこびりついた埃を払い、中がよく見えるようにして伝える。
中には、大小様々なケーブルに繋がれた少女が一糸纏わぬ姿で微動だにしていなかった。しかし、肩や膝からは機械部分が露出し、背中からは羽を想像する機械が取り付けられていたからだ。
あと局部がない。
「え?」
「ところどころに機械部品が露出してる。多分、ロボットとかじゃないかな」
「ロボット!? なんでそんなものがここに……」
「分からん」
《おそらくこの仮称『人造兵器アッシュトルテがボスなのではないかと考察します。また、害は無いと思われるため回収する許可を》
「起動できるのか?」
《わかりません。しかし、起動できれば大きな戦力となるのは間違いないでしょう》
「ふむ……動かしても問題なさそうか?」
《はい》
「なら回収しよう。ルーファスがそこまで言うのも珍しいしな」
《ありがとうございます》
「大丈夫なんですか?」
「……ああ」
「なんですかその間は。ちょっと不安になるじゃないですか!」
ルーファスが次元収納を起動。培養ポッドを土台ごと収納した。
そして、さらに何かないか見渡していると————部屋全体が赤い光で包まれ、甲高い警告音のような音が鳴り響く。
「なんだ!?」
「何事!?」
周囲を警戒しつつ、背中合わせで固まっていると————足元に魔法陣が出現する。それは部屋全体を包んでおり、逃げても無駄だとわかるまで数秒もかからなかった。
《足元に高魔力反応。転移魔法のようです》
「転移魔法だと、トラップか?」
「なんで!?」
原因も分からないまま、俺たちは光に飲み込まれた。
◆◆◆
気づいた時にはダンジョンの入り口にいた。
「あ、あれ……」
「追い出されたようだな」
:なんだったんだ
:部屋が役目を終えた、とか?
:追い出されたっぽいよね
「役目を終えた……そうかもしれないな」
「あの子を置いておく必要が無くなったから?」
「だと思う」
《敵も一切いませんでしたからその可能性もありますね》
「なにはともあれ、あの転移魔法が危険なものじゃなくて良かったよ」
:ほんとにそう
:それ
:驚きすぎて心臓止まるか思ったよ
:このあとはどうするの?
「キリもいいし今日はこの辺で終わろうかな」
そう言って俺の方をチラッと見てくる。
賛成だというように俺は頷いておく。
「それじゃ、また別の配信でお会いしましょう! バイバーイ」
カメラへ向けて挨拶し、桃瀬は配信を切った。
ちゃんと配信が切れていることを確認し、俺はパワードスーツを解除。次元収納へ仕舞った。
「それじゃ帰りましょうか!」
「おう」
そして俺たちはそれぞれの帰路へついた。
◆◆◆
家へ向かう途中。
「さて、明日は何しようかなぁ」
《武装の回収も必要ですのでしばらく活動は控えてほしいですね》
「まぁ、そうだな。俺も少し休みたいし」
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