第15話 vsブラッティキングウルフ
「黒瀬くん。あの飛ぶやつ出せる?」
「ビットのこと? 出せるよ」
「それで攻撃しつつ、一気に叩くの————『ウオォォォォォォンッッ !!』」
ブラッティキングウルフが痺れを切らしたように雄叫びを上げる。
「ルーファスッ!」
《ビット兵装展開します》
「来るよッ!」
桃瀬がそう叫ぶ。
敵の足元から、赤黒い何かが周囲に広がっていっていた。
「なんだ? あれは」
:やばい!
:それに気をつけて!触れるとまずい
:マーキングするのとその場所なら自由に動ける……だったはず
「自身の能力を拡張することができるフィールド、あれに潜って回避したり、触手や棘を生やしてきたりするから気をつけて!」
「厄介な……近づけない」
《危機感知及び魔力感知を常に発動させておきます》
「頼んだ」
《ビット兵装展開完了、指示を》
俺と桃瀬を囲むように10機のビットを展開し終える。
「照準、ブラッティキングウルフ—————撃てッ——!!」
合図と共に10機のビットからレーザーが放たれ、敵の頭、胴、足を狙う。
「ウオォォォォォォン!!」
雄叫びを上げるブラッティキングウルフ。
次の瞬間、地面の赤黒い液体が空中へ浮き、円形の盾を生成してきた。そしてレーザーは全て盾により防がれてしまう。
ビットから放つレーザーを撃ち止め、瞬時に別方向から撃つことで翻弄しようとしたが、自動で防ぐようになっているのか一発も当たらなかった。
「自動で防ぐのか? 厄介な……」
「あの能力をなんとかしないと接近もできない」
《おそらく固有の能力かと。あれを突破できる威力または速度、魔力切れを狙うのがいいでしょう》
「桃瀬。使える技で一番強力なのって何がある?」
「全魔力を全て刀に集約して斬撃を飛ばす……ってのがあるけど、10分くらいかかるのと、全魔力を使うからそのあとは動けなくなる。ただ、あいつくらいなら
「わかった。なら10分稼ごう。まぁ、その間に俺が倒してしまうかもしれんがな」
:あ、フラグが
:できるのか?
:さっきの野良ウルフとはレベルが違うぞ
「あ……」
《負けませんよ》
ルーファスの絶対的な自信が見える。
頼もしいな。
「ああ! 行くぞ」
「はいッ」
桃瀬が腰を落とし、刀に手を添える。魔力が身体から腕、手へと流れ、刀へ溜まっていく。
「ビットを敵周辺へ移動。その場で停止。攻撃の手を緩めるな」
《かしこまりました》
ブラッティキングウルフの周囲、全方向からレーザーを照射し、常に防御を発動させる。
「よし、安全弁解除。核魔力炉回路開け」
《安全弁解除。全身への回路開きます》
核により増幅された魔力が全身へ送られる。
ガシャガシャとロックが外れる音が聞こえる。
:何をする気だ?
:さっきみたいに近接戦闘するわけじゃなさそうだし……
コメントも困惑しているようだ。
《核魔力、全身へ回りました》
「了解。攻撃中のビットから三機離脱。桃瀬のそばにつけ」
《かしこまりました》
ビットが三機俺の頭上を通り過ぎ、桃瀬のそばへ向かう。
「さてと——」
「ヴァオォォォォォッッン」と痺れを切らしたように雄叫びを上げるブラッティキングウルフ。
「うおっ」
そのまま走り出しこちらへ向かってくる。
そして口から何かを吐くように液体を飛ばしてきた。
「撃ち落とせッ」
飛ばしてきたモノに向けてレーザーを放ち、液体は俺の前に落ちる。
すぐに視線を敵へ向ける————がそこにブラッティキングウルフはいなかった。
「どこだ?」
《前方に魔力反応はありますが……姿を確認できません》
どこからくる……。
「ヴオォォッ」
奴は目の前から現れた。大きく口を開いて
「——ッ!? ルーファスッ」
《魔力を前腕部へ供給します》
ブースターを噴かし、横へ移動することで攻撃を回避。そのまま、無防備な横顔に拳を入れる。
ブラッティキングウルフは短く鳴き声を上げながら左の壁まで転がり、壁に背中が当たることで静止した。
俺は追撃に出ようと一歩前に出す。
足に何か粘性の液体を踏んだような感覚が靴越しに伝わってくる。
……なんだ?
視線を下に向けると、そこには赤黒いヌメッとした液体が広がっていた。俺は急いで後ろを振り返る。
まだ、俺の足元までしか広がってないようで、目を瞑り集中している。
影響は無いようで俺はホッとした。
「さて……どうするか」
《着実に範囲を広げてきていますね。おそらく攻撃を受けた時でしょう》
「だな。自分の血からも広げれるのかもしれん」
《足元に魔力反応。攻撃来ます》
「なッ」
俺は急いでブースターを噴かし、その場から離れる。刹那、俺がいた場所に赤黒い円錐状の棘が出現した。
「あっぶねぇ……助かった」
《警戒を緩めないように》
「ああ」
ブラッティキングウルフは俺が回避に成功したのを冷静に見つめていた。
「どうくる……?」
再び地面へ沈むように消えていくブラッティキングウルフ。
「消えたか」
《魔力センサー最大出力で展開します。予測時間まで残り7分》
「了解」
7分か……時間が長く感じるな。
《右に魔力反応》
右の液体からブラッティキングウルフが出現。俺に向けて飛びかかってくる。
「あっぶねぇ……」
間一髪、身体を逸らし避けた。
「まるでサメだな」
:よく避けれるな……
「ルーファス、右手に魔力集中だ」
《かしこまりました。右手への魔力回路開きます》
右手へ魔力が多く流れ、漏れ出た魔力がバチバチッと稲妻を発生させる。
:電気……?
:でも魔力しか扱えないって言ってなかったけ?
:何をする気だろう
「次、来るタイミングで攻撃を仕掛けるぞ」
《はい。————来ます。3メートル後方》
「了解ッ」
俺は振り返り、奴の眼前に右手を突き出した。
「魔力増幅————放出」
手刀のように繰り出した右手から青白い魔力がさらに増え、手が包まれる。そして放出。
真っ直ぐ伸び、ブラッティキングウルフの目へ直撃する。
グギャと悲鳴を上げ、奴は液体へ潜るように逃げた。
「脳天までは届かなかったか……」
《魔力反応を確認。マークします》
頭部ヘルメット内に魔力反応があったところにマークがつけられる。
次の瞬間、マークのつけられた五箇所から棘が出現。俺に向かってきた。
「フンッ!!」
一本目、腹目掛けて来た棘を拳で砕き、すぐさま他の棘を砕く。
遠くでブラッティキングウルフが顔だけ出しているのに気が付く。
おーおー怒ってらぁ。
「ルーファス、小型ミサイル用意。棘が出てくる瞬間に打ち込め」
《かしこまりました》
ブラッティキングウルフは未だ地上に現れない。
このまま、じわじわと削って殺す気だろうか……。
「黒瀬くん! いけるよ!」
「了解ッ」
もう溜まったのか。
よーし、あとはあいつを地上に出すだけだな。
「あの生成しているフィールドを消して引き摺り出す。龍撃砲用意、安全装置解除。ビット全機は桃瀬の防御を」
《ビット全機帰還。桃瀬様の周囲にバリアを展開。続いて、パワードスーツ安全装置解除。核魔力炉圧力上昇》
ガッシャガシャと背中にある安全装置が外れ、地面へと落ちる。全身を巡っていた魔力が中心の核魔力炉に集中する。
「龍撃砲発射シークエンスへ移行」
《発射シークエンスへ移行します》
胸の中心くらいに竜の口を模した装甲が追加され、エネルギーが溜められていく。
《攻撃来ます。迎撃開始、ミサイル発射》
再び、棘がこちらへ向けて放たれる。
ルーファスは次元収納を展開し、中からミサイルを次々と発射していく。それらは全弾命中、俺に到達せずに終わった。
《敵魔力を捕捉。正面20メートル先、液体内。核魔力を龍魔力へ変換。出力上昇》
「対衝撃装着」
龍の尾を模した衝撃吸収用の装備を付ける。
《完了。発射まで3……2……1……》
「————発射ァッ!」
光の奔流が辺りを包む。
ビームは核魔力の証である青から龍魔力の紫へ変化し、一点に収束、放出されることにより、直線上とその周囲を灰燼に帰すだろう。
赤黒い液体へ直撃し、全てを蒸発させるように消し去っていく。
そして敵の魔力反応があった場所まで到達した。瞬間、ブラッティキングウルフが出現する。隠れ蓑にしていた液体が消え去り、押し出されるように出てきたようだった。
「今だッ!」
「はいっ!」
俺の掛け声に合わせて、桃瀬が溜めに溜めた斬撃を飛ばす。魔力を纏ったそれは一直線にブラッティキングウルフへと向かう。
そして————両断。
ブラッティキングウルフは絶命した。
「やった……?」
《魔力反応無し。絶命を確認》
ルーファスからの分析が空間に響く。
「倒したぁ!」
桃瀬が喜びで両手を上げ、歓喜の声を上げる。
「なんとかなったな」
「ですねぇ〜。ちょっと休憩してから先に進みましょう」
「そうしよう」
:終わりを覚悟したよ……
:勝ってくれるとはね
:お、俺は信じてたぞ!
「あははっ」
その場に寝転がる桃瀬。
「そういえば、さっきの技はなんだったんですか? そのままブラッティの奴を倒せそうな勢いでしたけど」
:確かに、気になる
:かっけぇビームだった
「あー、あれか。龍撃砲って言ってな————」
そうして俺たちは少し休憩をすることにした。
この間もルーファスが機械を操作し、素材を回収してくれている。
ルーファス様だよ、もう。
—————————————————————————————————————
最後までお読み頂きありがとうございます!
続きを読みたい、面白いと思っていただけましたら☆☆☆、♡、フォローよろしくお願いします!
更新遅くなり申し訳ないですm(_ _)m。不定期になってしまっていますが、更新はしていきますので気長にお待ちいただけると……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます