第6話 歓喜とロゴス

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 二人に分かれて探すのは効率が良くていいが……果たして彼女と分かれてしまって正解だったのだろうか。


 彼女がアイツに襲われて無ければ良いが……そういえば、彼女がアイツに捕まるとどうなるのだろう?


彼女に聞けば分かるかも知れないが、今は居ないのだから考えたって仕方ない。


 俺は俺の為に、本を探すのだ。


 しばらく探していると、本棚の上に一冊、他の本とは明らかに違う本が置いてあった。


近くに椅子があったので、それに乗って取ることにした。


 「もう、少し……!」


 腕を必死に伸ばし、ようやく取ることが出来た。


 ここに来るまでによく分からない仕掛けや謎解きを解いて、さらにアイツにも追いかけられてきたが、ここに来てようやく一冊手にすることが出来た。


 「さあ、この本をもう一冊ーー」


 途端、激しい頭痛が俺を襲った。


 「!う…あぁ!があぁぁ!!」


 なん、だ……な、にか。な にかが、あた ま に くーーー



         I



 「別に要らないのよ。あんたは」


 そうだ。俺は、望まれて生まれてきた訳じゃないんだ。


 これを言ったのは、本当の親じゃない。俺の両親は、既に死んでいるんだ。


 何故望まれて生まれてきた訳じゃないのか。理由は分からない。ただ、この言葉を思い出した時。そう理解したのだ。




         6


 「!っはあ!……はぁ、はあ。」


 もしかして、さっきの頭痛や言葉は。今までの、現世での、俺の記憶か?


今までにない不快感と絶望。現世や現実に、希望なんて無い。ここまでハッキリと分からせられることがあるだろうか。


 絶望感、虚無、退廃。ただひたすらに辛い。このまま、この世界に居た方が、良いのではないか?


 「違う!!」


 何を言ってるんだ、俺は。帰るんじゃなかったのか、あの世界に。


 重くなった足を、必死に動かし続ける。何のために?


 帰るために。あの世界へ帰るために?

歩みを止めないのだ。


 さらに探し続けると、机の上に一冊、自分の持っている物に似た本があった。


 「やっと…あった」


 これで二冊目……もう彼女は二冊見つけただろうか?


 「………。」


 また、あの感覚に襲われるのか?


正直、あんな思いは二度としたく無いが、それでも。


それでも、俺は帰ると決めたのだ。


 アイツは相変わらず叫びながら追いかけてくるが、巻くのにも慣れてきたようだ。今では息も切らさず巻くことが出来るようになった。


 きっと、俺が速くなったんじゃない。アイツが遅くなったんだ。


 アイツが精神なら、俺は体だ。体があの世界に帰ろうとしているから、この世界を創り出したアイツは弱っているんだ。


 「…よし、やるぞ!」


 俺は二冊目に手を触れる。


さっきのように激しい頭痛はしたが、迷いの無さが、痛みを和らげてくれているようだ。いや、単純に慣れただけなのか。


 記憶が甦る。その時、俺は何故望まれて生まれてきていないのか。その理由を知ることとなった。

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