第4話 逃避行
3
アイツに追いつかれないよう必死に走る。走っている中で、俺はあることに気がつき彼女に聞いてみることにした。
「なぁ、同じような所を走ってるように見えるぞ。どういうことだ?」
走りながらの質問だったからか、無視された。
必死に逃げる。距離が徐々に空いてきている気がした。そして部屋に入ったタイミングで、追ってきていないことを悟った。
「はぁ、はあ」
息を整えていると、彼女がなんとも言えない表情で、さっきの質問に答えてくれた。
「この世界は、あなたの、はぁ。ん、あなたの神化世界。だから、基本的には世界に範囲が存在するの。だけど、今のあなたは2つに分離している。だから世界自体が不安定で際限が無くなっているの。」
息を整えてながら答えてくれた彼女に感謝しつつ、もう一つ聞いた。
「そうか。もう一つ、この世界に居たあの喋る本棚はなんだ?」
そう言うと、彼女は少し驚いた表情をして、言葉にした。
「その本棚こそ、ここから出てアイツに勝つカギよ」
「なに?本当かそれ」
「ええ。今までの神化世界でも、あの神擬キ以外の喋る物や者が、この世界から出るカギになっていたわ。恐らく今回も……」
彼女は動き出す。
そもそも何故彼女は、見ず知らずの自分という存在の問題に、首を突っ込んでいるのだろう?
彼女をそうさせる理由が知りたかった。それに、さっき聞きそびれてしまった、何故ここのことを知っているのかということも、まだ気になっているのだ。
しかし、彼女は動き出してしまっている。なんとかして聞きたいのだ、俺は。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「?どうしたの?早くあなたの言っていた喋る本棚まで行きましょう」
「いや、……さっき聞きそびれたこと。それに、なんで見ず知らずの俺の問題に、自分から入ってきたのかを、聞きたかったんだ!教えて、くれないか?」
「……そんなことより、早くここから出ることを考えて。いつまでもこの世界がある訳じゃないの。」
「……さっき言ってた世界が不安定だってのと繋がってるのか?」
「ええ。不安定で範囲が定められていないこの世界は、同時に崩壊してるの。そうすればあなたとアイツの勝負とは関係なしにあなた達は死ぬ。体と精神の崩壊ね。」
「そう、なのか…。」
「だから、今は私のことは後回し。聞くならここを出た後にして。」
「…分かった」
果たしてここを出られるのか?いや、出た後に彼女と話すことはできるのだろうか?
いや、いまは出ること最優先だ。彼女のことを知るためにも。
喋る本棚の元へと、俺達は走り出した。
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