第3話 同人種間の異物
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俺が彼女の元へ飛び込んだ瞬間、彼女はヒラリと躱し、扉を閉め、鍵をした。
俺に似た化け物は激しく扉を叩いていたが、暫くするとその音も聞こえなくなり、助かったのだと分かった。
どうやらここは部屋であって扉があったようだ。あまりにも夢中だったため、存在に気づいていなかった。
「これは、あなたの世界のようね」
「…あんた、なにか知ってるのか」
「ええ、だからここにいるの」
「ここは一体なんなんだ!?どぉして俺がこんな目に合ってる!?どぉして!?」
「落ち着いて。順を追って説明する」
冷静さを欠いた俺を前にどこまでも冷静な彼女を見て、俺は少し無力さを感じた。今は落ち着いて、彼女の話を聞こう。
「……まず、あなたは世界から消えようとしている。意味がわからないと思うけど、本当よ。」
「………。」
「ここはあなたの世界。あなたの意識世界。私はこんな感じの空間を
「…どんな理由があるんだ?」
「まずこの世界を創り出してしまう人には共通点がある。それは、ある物や人を神のように信じ、崇め、それに縋らないと生きられないという点よ。あなたは見たところ本に陶酔してるようね。」
少しだけ心が重くなった。確かに俺は本に書かれていることが全てだと思うし、今までそれに縋って生きてきた。
その心が、まさかこんな事態を引き起こすとは。
「…話を続けるわ。そしてこの世界を創り出すことで自身の神とする物や人と一体化を図ろうとするの。しかし、体はそれを許さない。だからあなたはこの世界に来てしまったの。」
「どういうことだ?俺は俺だ。」
「分からないのも無理ないわ。分かりやすく言うと、あなたは今この世界で、体と精神が分離してしまっている状態なの。」
「?まあ何となく分かった。だけど、俺が体だとして、精神の俺は何処へ行ったんだ?」
「さっき、あなたを異常に執拗に追いかけてきた、アイツよ。」
「あいつが、俺?」
にわかには信じがたいが、姿形が似ていること。さらに彼女の話を聞く限り信じるしか無さそうだ。
「私はあの精神だけの者のことを 神擬キ《カミモドキ》 と呼んでる。アイツから逃げて、何処かにある出口から出れば、あなたは精神を従えて元の身体に戻れる。」
「……アイツに捕まったら?」
「あなたはアイツに従って、身体を失い、この世から消滅する。」
身震いがした。この世から消滅する…?どうして、そんな事を?
その前に、何故彼女はこんなことを知っているんだ?
「何故君は、そんな事を知っているんだ?」
「……それはーーー」
バンッ!!!
「ミ、ミミミ、ミツケタァァ!!」
「「ッ!!!」」
彼女が喋る前に、閉めた扉とは別の扉から、アイツが来てしまった。
「逃げるよ!」
彼女の声に応じて、アイツとは反対の扉から、何処にあるかも分からない安全な場所へと走り出した。
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