女の子
これは知り合いの医師から聞いた話。
熊本の某病院で勤めている医師に、怖い話はないかと尋ねたときに聞かせてくれたものだ。
術後などに入る集中治療室、ICUという病室はとにかく何もない。
昼夜問わず明かりがつき、人の気配があり、機械音が響く。
更に痛みや麻酔が加わって、大抵の人はせん妄状態に陥る。
せん妄状態というのは、平たく言えば妄想幻覚が見えたりする症状だ。認知症に近いと考えてもらっても良い。
ただし認知症と違って可逆的なので、術後回復すれば症状は改善する。
このせん妄状態の時、虫が身体を這ってるとか、いないはずの人が見えるとか、わりとそういう訴えを聞くことが多い。
この医師もよくそんな話を聞いていたそうだが…
医師が勤めていたICUでは、せん妄状態の人全員が、同じことを訴えるのだそうだ。
「指先の黒い女の子がいる」
と。
指の黒い女の子が立ってた、とか、走り回ってた。とか、とにかく全員、同じ女の子を見ている。
私は話を聞きながら、思わず首を捻ってしまった。
「何で指が黒いんでしょうね?」
そう私が尋ねると、医師は何でもないように話してくれた。
「昔そこで、術後に死んだ女の子がいてさ。その子、循環不全で末梢循環悪くなって指先真っ黒になっちゃってたんだよね」
と笑っていた。
こうも綺麗に繋がる怪談も珍しい。
時折機器類がイタズラされるそうだが、その子がまだICUに居るんだね。という事で、これまた美しく纏まった。
何とも収まりの良い話だった。
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