面倒
あるまん
よくいる
元来の面倒臭がりな性格がかなりの高みにまで達していて、命に関わるとかでもない限り面倒なら辞めてしまう。
アラフィフで障害年金と生活保護で暮らしている為贅沢しなければ問題ないし、物欲もそれほどない。
会社の圧力や出世欲に駆られ焦って仕事をする事も不要な上、最低限度以外物を買う為に稼ぐ必要もない。
友達も居なければ親戚との仲もよくはない。急な飲み会等に誘われる事もなければ訃報などで香典の準備をする必要もない。結婚式など30年は行っていないだろう。
焦らないのは日常においてもで、どんな場所でも走ったりしないし、信号が変わりそうでも横断歩道直前で止まり、スーパーのタイムセール目掛けて行く事もないが、もし偶々やっていて商品が最後の一個だとしても直ぐに籠に放り込む事もない。
借家であるアパートに風呂釜がないが大体シャワーで充分で、偶に温泉に行きたくなっても余程気分が高揚していない限り中止もしょっちゅうだ。
今日も直前までゆたりと用意をしていた癖に、結局は面倒になって辞めてしまった。明日ちょっとした作業があるので疲れを取りたかったが、温泉に行くのに疲れてしまったら元も子もないからな。
病院も面倒と思えば直前に電話をして別の日にして貰う事もある。必要な薬が切れたとしても一週位我慢出来るからな。
歯痛等も週末なら痛み止めで散らし、嗽をして患部を冷やし、歯に正露丸を詰めて、気分の乗った月曜火曜に予約を入れる。流石に予約をした初診をずらして貰う事はないが。
一体何時からこうなったか、面倒だが考えてみる……高校の時学校からの紹介で地元の電気店の面接があったが、連絡もしないで行かなかった事があるな。親や教師に死ぬ程怒られたが面倒だったので仕方ない。
会社勤めしてからもその当時いた知人に、今思えば充分我慢出来る愚痴を言って、なら休めばいいじゃんといわれたのをそうだなと本気で取り、そのまま知人宅に泊まって会社を休んだ事もある。連絡も面倒でしなかったので次の日行ったら首を告げられた。まぁその会社はブラックだったし辞めた数年後には潰れていたが。
障害認定される直前まで仕事を休むのはしょっちゅうだった……この当時は同居している親も現役だったので更に休む事、仕事辞める事に抵抗がなかったかもしれない。最低だが面倒なのは仕方がない。
こんな人生でも好きな人が出来、彼女に会う為に働いている喫茶店に足繁く通った時期がある。
男の影も見えず、愛想も良く、当時無職でコーヒー位しか頼まなかったのに嫌がらず対応してくれた。
世間話をする程度には仲良くはなったが、結局告白も、いやそれ以前にそこに行く為に身綺麗にする事も、更にはそこに行く為に自宅から数10分歩く事も面倒になった。
そして数か月通わず、偶々どうしても外せない用事の帰りに久々寄った時にはもう退職をしていた。マスターによれば地方の親の介護の為帰郷したらしい。
その瞬間には告白出来なかった事、そして彼女に会えなくなった事を死ぬ程後悔したが……そのうち後悔する事も「面倒」になった。
25年以上経った今も時たま彼女の笑顔を思い出す事はあるが……当時でも若干年上だった人だ、今は結婚し子供も、いや孫もいるかもしれないな。
……もし当時面倒臭がらず彼女に告白し、お付き合いや結婚していたら……今どうなっていたのかな?
まぁこんな面倒臭がり屋が彼女と付き合ったとしても、結婚し子供が生まれるまで持つ訳はないか、必要書類を書くのも面倒臭い……そう苦笑しつつ、まだ昼といえる時間だが布団を被り、昼飯も面倒で食べずに眠りについた。目覚ましも面倒でかけてない、多分腹が減るまで起きる事はないだろうな。
命に関わる事すら面倒臭くなった時……それが終わりだろう。死後の世界へ行く事も面倒臭いがな。
面倒 あるまん @aruman00
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