第2話 力尽きた戦士

"戦士"クランは地面に倒れていた。ぜいぜいと呼吸が荒い。その鎧はひしゃげ、幾つかの部位は吹っ飛び、兜も吹き飛ばされ、頭からも血が流れていた。


「……クラン、大丈夫か?」

ドーグは近づいてクランに声をかけた。


「……ドーグ……」

クランは震える手で大剣をドーグに差し出した。


「……もうダメだ……頼む……」

クランの痙攣が激しくなる。畜生!


「……アラン様」

キリオが冷静な目でドーグを見つめた。ハイハイわかったよ。


ドーグは大剣を受け取り、それを背中に背負い、クランも抱きかかえて起こしてそのまま肩を担いだ。別に介錯とかそういう話じゃない。"戦士"クランは戦士ではなく、本業は付与魔術士エンチャンターである。強化の術ストレングスで短時間だけ戦士らしく振る舞っているだけだ。


そして強化の術の効果が切れれば普通の人間より弱くなる。いやクランは普段から普通の人間より力がないのでもう全く動けなくなる。ので重い大剣はドーグが代わりに背負ってやらなくてはならない。ついでに肩も貸してやっているだけだ。


ドーグはそれほど体力に優れるわけではないが、それでも一行の中では筋力体力共にNo.2である。そしてNo.1は他の理由によりそういう手助けはしない。ああもう、本当にしょうがねえ話だなあもう。


「あーあーもう、高かったのに」

キリオは散乱したクランの鎧の破片を見てそう言った。その鎧は見た目はゴツいが中抜きして軽量化してある。ので防御力など皆無なのにその分制作費が高いのだ。なのでもったいないと思いつつも、それはもうただの金属製のゴミなので拾い集めたりはしない。一行は隊列を整えて先を急ぐのであった。

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