ダブル・ヒーロー

@samayouyoroi

第一遍

慣れぬ戦い

第1話 形式との闘い

ドーグは必死に奮闘していた。ああクソッ!もうここまで出かかってるのに!


「ド……アランさま!ここ間違ってる!」

"剣士"キリオはまた小うるさい事を言い始めた。


「だったらアンタが計算しろよ!」

こっちは火力計算で忙しいんだよ!


「おいまだかよ!」

"戦士"クランの悲痛な叫び声が聞こえた。


「もうあと20秒も持たねえよ!」

クランはそれでも大剣でレッドローパーの攻撃をしのいでいた。


「……毒が効かぬな……」

"鍵師"ボイルは冷静にそう言った。


「ちょっとまだなの!?」

"僧侶"シャルが金切り声でそう急かした。


「シャル!危ないですよ!」

"魔法使い"ニオゼはシャルを抱えて下がった。


「ああもう!これでいいから早く行きなさい!」

キリオはもう投げやりにそう言った。


「有効射程距離は2メートルよ!近づいてね!」

2メートルならもう肉弾戦でいいだろうがよ!


「畜生!」

ドーグは苦手な片手剣を構えてレッドローパーに突撃した。


レッドローパーは危険な自立型植物である。毒はさほど強くはないが、それでもその強力なよくしなる枝が鞭のように動き敵を襲う。まともにその枝を身体に受ければ人間など吹っ飛ぶし骨折も免れない。ちなみにその枝はどう見ても5メートルより長いものもあり、わざわざ射程距離2メートルの稲妻の術ライトニング・ボルトを使うなら松明でも投げた方が早い。しかしそれは「勇者らしくない」のであった。


片手剣が苦手とはいえドーグも名誉ある者ジ・オナーである。全くの素人ではなく、一本の枝を断ち切り、もう一本の枝も片手剣でいなした。そうしてさらに襲ってくる枝も片手剣で巻き取り──巻き取られつつも、なんとか2メートルまで接近した。


「がああぁぁ!」

ドーグは叫びながら稲妻の術を実行し、レッドローパーに撃ち込んだ。


「──────」

もちろんレッドローパーには声帯はないので叫びはしなかったが、やはり断末魔の気配はした。魔法使いが使う稲妻の術よりは弱いが、それでもこれ程の至近距離で魔法を受けたら無事で済む訳がない。レッドローパーは焼かれ、火が燃え広がり、よろよろと後退し、そしてどう、と倒れて動かなくなった。


「……ふーっ……」

ドーグは息を吐き出し呼吸を整えた。鎌でどうこうできる敵ではなかったが、それでも苦手な片手剣と魔法でレッドローパーと戦うのは厳しかった。

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