第9話 賢者様
ワタシは、気が付いたら神殿の治療棟にいた。
「にーちゃん!!何やってるんだよ~~」
げげっ……弟のシンヴァの声だ。
ワタシは恐る恐る顔を声のする方に向けた。
ああ……弟のシンヴァだ……。
結界師として名前を馳せていると聞く、魔法使いのシンヴァだ。
「し……『シンヴァ』」と言おうとしてワタシは、口がきけなかった。
口の中を切って腫れていたためだ。
歯を食いしばっていたため、相当口の中がひどい状態だった。
鞭の傷は、半分くらいは、治療師の人が癒してくれた。
百パーセント癒してしまうと、人間の本来持っている回復機能を損なってしまうらしい。
でも鞭での裂傷は、かなり痛い。
「にーちゃん!!俺と同じ淡い金髪だったのに、白髪になってるじゃん!!ムンノとエラドーラとディナーレで窃盗で捕まってるのは何で?
お金が欲しければ、伯父貴に頼るとか、ねーちゃん頼ったら?」
なんで、ワタシの前科が、シンヴァにバレてるんだよ。
その時にドアが開いて、剣聖と仰々しい神官服を着た人がいっしょに入って来た。
「オルランド賢者様、兄を助けていただきありがとうございます」
シンヴァが恭しく神官服の人に言っている。
「たまたま、こちらに来ていた銀の森の三賢人の精霊使いが気が付いたことです。何かの手違いのような拷問があると……それよりもオリヴィエいいえ、本名のリュート・グレの方が良いですか?」
この声!!
え?
え!?
えぇっ!?
賢者様!!?
カウル様が神殿トップの賢者様?
ワタシは、カウル様の顔を確かめるべく飛び起きた。
途端に傷が開いて「ぎゃー!!」と悲鳴を上げてしまった。
確かに、カウル様だった。
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