第8話  拷問

 ワタシは、縄で繋がれサントスの神殿まで連れて行かれた。

 そうしてすぐに、町長の悪事を何処で知ったのか尋問された。


 ワタシは、何も喋らなかった。

 店の掟だったからだ。

 主様ぬしさまが良い人でも悪人でも、店では、誰のことも言ってはならない。

 良く鍛えられた、筋肉の騎士が革の鞭を持って来た。


「早く、喋った方が楽になるぜ」


 でも、ワタシは町長様など知らないんだ。

 一度も肌を合わせたことが無い。

 彼は……そう、マクスの客のはず。


 ワタシは一瞬、怒りに燃えた。

 陥れられたのだ。

 一番の友人だと思っていた友人に!

 ワタシは、無意識のうちに唇を噛んでいたらしい。

 血がしたたり落ちて、騎士がギョッとした顔をした。


「何か言うことは無いのか!?」


「何も……」


「では、その綺麗な肌に傷がつくことになるぞ」


「どうぞ」


 やがて、ワタシは、皮膚の裂ける痛さで悲鳴を上げた。

 遠のく意識の中で、鞭の音と自分の悲鳴が美しく共鳴してるように感じて笑ってしまった。


「誰に断っての拷問だ!」


 遠くで声がする……。


「剣聖様、ですが、これは剣聖様の出て来る案件ではありません

 サントスの町長の悪事を知り、人々に噂を流した張本人です」


 剣聖……?この世界で、ただ一人の位の人だ。

 騎士としても神官としても一流の資格を持っている者のみに与えられる


 剣聖がワタシのところへ来てくれた。


「君が……『ミツバチの館』のオリヴィエ・ダナ?」


 口の中が切れていて、まともに喋れないワタシは頷いた。

 なんで、剣聖がワタシを知っているかは謎だったけど?

 ワタシの意識は、そこで途切れた。



  

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