第7話  噂の出どころ

 例の噂は、サントスの街中に広がった。

 怒ったのは、アルテアの商人ギルドだ。

 アルテア王国は、王室よりも商人が、権力を持っていた。

 大体、その席も金で買えるというのだから、お金至上主義なのは分かるだろう。

 古い王国だけあって、名家も多い。

 代々続く銀行家や、外地に土地をたくさん持ってる大地主。

 アルテアの城壁の中の都市は狭いが、やり手の実業家たちは、外の国で金を稼いでいた。

 そうした人々の多くは、商人ギルドの地位を金で買い、アルテアの実権を握っていたのである。


 百年前に、建てられたサントスの神殿は、ドーリア滅亡の混乱のさ中、現れた賢者メルクリットのために建てられたものだ。

 東方出身の彼の宗教を伝え、人々のために祈った。多くの人は救われ、荒廃した街から復興していったのだ。

 神殿が大きくなると、サントスの街も大きくなっていったという。


 サントスが独立したらどうなる?

 銀の森だけが聖地でなくなる?

 いや、サントスも聖地になるのか?


 やがて、逮捕されたのは、なんとサントスの町長だった。


 何がしたかったんだか……とこれはワタシには関係の無い事件だと思っていた。

 しかし、その後で知らされることになるんだ。

 僕が知らない間に、事件に関わられていたことを……。


 サントスの町長は、失脚して新たな町長が、神殿から来た。

 ロレンツォ・デーレ様だった。

 僕の客だった。ロレンツォ様は、いつも自分の身の周りをさせる神官といらっしゃる。そいつが不覚にもロレンツォ様の名前を呼んでしまって、彼の正体が、ワタシたちにバレたのだ。

 彼は、神殿の実質ナンバーツーであると言われている。

 神官が世俗に首を突っ込むのかよと、突っ込みそうになったけど、

 誰にも言ってない。


「オーリ」


 ドアのノックと同時に一つ年下のマクスが入って来た。


「何?マクス」


 濃い茶色のくせ毛を細かく何本もの三つ編みにしているマクスとは、ここに来て以来の友人だ。


「槍を持ったこわ~~い騎士のお兄さんが、君を迎えに来たよ」


「槍って、サントスの槍騎士隊?」


 ワタシは、失禁して倒れそうになった。

 サントスの槍隊は、警備騎士の中でも最強だ。

 しかも、特殊部隊としての人が多いと聞いていた。

 つまり、裏仕事もやるのだ。


 そんな人たちが何で、ワタシを迎えに来るんだ……?


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