第6話 噂
「あ……う……ん……」
回を重ねるうちにカウル様は、ワタシの身体に馴れてこられたようだ。
次に来た時には、一番奥まで入って来たし、カウル様も満足げな顔をしておられた。
でも体位は後ろからで、顔を見合っての行為はしてくれない。
「どうして、後ろからしか駄目なのですか?」
聞いてしまった。
「それは……ちょっと……」
カウル様は口を濁してしまわれた。
これ以上は、聞いてはいけない。
そして、カウル様は下になることも嫌がられた。
トラウマ級のモノがあると察せられる。もちろん、口には出さないけれど。
その頃、アルテア城壁の中の一部で、サントスの街が神殿ごと独立をするという噂が流れていた。
「カウル様、知ってます?あの噂」
行為の後で、おばさんに湯を持って来てもらって、カウル様の身体を清めていた。
本当に彫刻のように美しい。彼の(自主規制)も彫刻並みなんだけど……。
「サントスの街が、銀の森のように治外法権を持つところになるってことですか?馬鹿な事ですよ、世界が二つに分かれてしまいます。僕が許可した覚えは無いです」
カウル様の怒りのこもった低い声は、窓ガラスも驚いたようにガタガタと音を立てた。
ワタシも、カウル様の足を洗っていた手が止まってしまった。
「カウル様?」
「どうかしましたか?」
もういつものカウル様だ。先ほどの怒りのこもった声はない。
「良い香りの湯を使ってますね」
「安眠効果のハーブを入れてあります。今夜は、ワタシのリュートでお休みください」
「ここへ来る時間が、もっとあれば良いのですが……」
カウル様は残念そうに言う。
「そう言って頂けるだけで、本望です。カウル様」
ところが、噂はアルテアの城壁の内部の一部だったはずが、城壁の外にまで流れ出し、神殿が出所を調査するに至った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます