95 サンキエムの苛立ち
じっとりと湿気を含んだ重たい風が吹いて、シダの葉がざわざわと揺れる。
サンキエムは重たそうにざわめくシダの茂みを見回して、苛立ち紛れに足元の壊れた
(壊してやる、全部、壊してやる)
苛々と爪を噛んで、隣に立っているセティエムの
「こいつももうじき壊れるな。もうちょっと遊びたかったけど、もう面倒だし、さっさとトドメを刺しちゃおうか」
サンキエムの独り言に、
「俺はまだ戦える! 俺は完璧な
「ああ、そう。じゃあ頑張って。まずはさっさとあいつらを見つけてよ」
(セティエムの
サンキエムの妹のシジエムも、
そのくせ、本物が傷つくのを嫌がって、サンキエムに
所詮自分が生み出す
姉のプルミエにとってもそうだ。
プルミエは、
(僕の
セティエムの
サンキエムは冷めた視線でその様子を眺めていた。
(みんなそうだ。都合よく
そう思えば、必死に
(所詮は偽物。最後には壊れるだけのものなのに、必死になって。セティエムに勝てば本物になれるとでも思ってるのかな)
ふん、とサンキエムは鼻で笑う。馬鹿馬鹿しい、と吐いて捨てる。
「お前だって、最後には壊れるんだ」
サンキエムの言葉に、
「それでも、俺はまだ戦えるし、勝てる!」
あはは、とセティエムは笑う。
「そう言うならさっさと勝ってみせなよ。お前が勝てばもしかしたら、姉さんはお前を本物の代わりにしてくれるかもね。それで、本物みたいに扱ってくれるかも。それの何が面白いのか僕にはちっともわからないけどね!」
サンキエムはまた、足元に落ちていた壊れた
「本当に、苛々するな! 全部壊してやる! 全部!
苛立ちをぶつけるように、サンキエムは何度も何度も
その耳にふと、聞き覚えのある声が届いた。
「そうだ、ソフィー」
その声は小さく、ざわざわとした葉ずれの音にかき消されそうだったけれど、確かにセティエムの声だった。
ぼそぼそと、人間が何かを話す声が聞こえる。「セティが」「サンキエムを直接」聞こえる言葉は断片的で、何を話しているかまではわからない。けれどそれはやっぱりあのセティエムの
(見つけた!)
サンキエムはようやく楽しそうに笑った。
またセティエムと
「いいよ、壊しちゃってよ」
サンキエムの言葉に、
「
周囲に次々と
炎はあっという間に広がって、セティエムと
サンキエムは猫のように目を細めて、セティエムと
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