終話 異世界、きました

 俺はなんか、ほっとしていた。

 ながいこと抱えていた重荷を下ろしたような感じだった。

 ここではだれからもなにも期待されないし、新しい魔王として、歴代魔王に恥じないようにというプレッシャーもないのだ。

 なんか、よかった。負けたけど、なんかよかった。

 なぜかいきなり転生させられて、そんで、ここだと魔力がまったくつかえないことが分かって、なんか逆に安心したっていうか、そんな感じになったんだよな。

 しばらく歩いて、「シンバシ」ってとこに着いて、「イザカヤ」ってとこで拾ってもらって。

 俺はいそいそと、焼き魚の皿を運んでいた。

 なれない仕事でちょっとキツいけど。なんかハッピーなんだ。

「魔王さま! なにやってんスか! 三番テーブル、おひやが出てないっスよ!」

 ダリはけっこう厳しいが。

「ダ、ダリ・・・、あんた、なんか魔王さまに厳しすぎない?」下げる膳を持ったまま、ガーロが言う。

 ダリは腰に両手をあてて、はあっ、とため息をつく。

「なに言ってんのガーロ、魔王さまモタモタしすぎなのよ。だいたいねぇ、魔王さまはこの世界の商売ってもんが分かってないのよね」

「だれだよ、おめぇ」

「おい! 新入り三人! 配膳が終わってねぇぞ!」

「はあい!」

「あ、あたらしいお客さんだ! はいっ魔王さま、声出してぇ!」

「い、いらっしゃいませええ!」


                                 おしまい


                             もとい、続きます






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