第6話 タエ 対 魔王アガレス

 魔王アガレスは、狂乱していた。

 ヤバい! ヤバい! ヤバい! どうしよう! どうすんだ!

 転生させたヤツもやられたっぽい!

 魔王の混乱によるすさまじい振動と、巨獣に壊された城の崩落で、城内は混乱のるつぼと化していた。

「だ、だめだ! ここにいたら命がない! に、逃げろ! 逃げるしかない!」多くの家臣が、魔王を置いて城から逃げようとしていた。

 ああ、コイツら!

 魔王はそれにかまっていられなかった。

 どうすんだ!?

 巨獣にはどうやらどんな魔術も通じない。そろそろそれは魔王も気づき始めていた。理由は分からないが、魔術に圧倒的な耐性があるのだろう。巨大呪文などいくら用意してもダメっぽい。

 だからといって、ほかにどんな手立てがあるというんだ?

 魔王には、代々受け継がれた禁呪がいくつかある。攻撃魔法もいくつもあるが、巨獣に通じないんじゃないのか? 極大黒呪ですら通じなかったんだぞ?

 ああ、くそ! あのでかさでなきゃな、あのバカ力をなんとかできりゃ・・・、ああそうだ! アレならいけるんじゃないか? アレをやるしかないんじゃないか?

 アレだ!


 ランスエリスたちは、魔王城のなかを走っていた。

 城は崩落していた。地鳴りが絶え間なく響き、足元は揺れ、壁や天井の巨石が落下してきた。火の手もあがって、あちこちに火炎のゆらめきが垣間見え、強い匂いを放つ黒煙が、そこここに充満しつつあった。

「急ぐんだ!」

 巨獣の歩みは速かったが、それでも残された時間は一時間を切っていた。

 身を隠しながら進んでいたため、なかなか城の中央部にはたどり着かない。

 エリクシールのほどこした、隠形魔術のため、ほとんどの魔族にはランスエリスたちのすがたは見えていない。だが、上位魔族にはおそらく通じない。

 巨大な回廊のような場所を抜けると、これも巨大な扉が現れた。

「おそらく、あそこが王の間だ!」

 扉の周囲には、多くの魔族がいて、右往左往している。とても近づけるようすではない。

 しかも、扉の向こうには魔王がいるかもしれないのだ。

「どうすれば・・・」

 そのとき、城の揺れがひときわ激しさを増した。

 大扉が勢いよく解放し、多くの魔族がいっせいに、逃げまどうようにまろび出てきた。


 ガーロは焦っていた。

「どどど、どうしよう!」

「ど〰〰、どうするったってぇ〰〰」ダリは魔王さまの魔力をつかったあとから、ちょっとおかしくなっている。

 城は崩落していた。魔王の間もつぶれかけていた。

 激しい揺れと、雷鳴のような地響き。崩れ落ちる岩壁で、魔王の間はすでに足の踏み場もない。

 ふたりは魔王の間の、ちいさな結界のなかにいた。彼女ら低級魔族のために、特別に作られたものであった。抱き合っていた。

「にに、逃げなきゃ!」

「だって〰〰、出れないじゃん〰〰」

 結界を出れば、魔王さまの魔偉にさらされて、あっというまに死ぬだろう。かといって、ここにいれば崩落に巻き込まれるにちがいない。

 魔王さまは、玉座の壇上に立って、怒りのうなりをあげているようだ。そのからだの周囲に陽炎のように魔気がゆらいでいる。あれに触れただけで上位魔族ですら命がない。その周囲には竜巻が起こりつつある。爆発寸前だ。

 あれを見た魔王の間にいた大勢の魔族は、命からがら逃げ去った。ここにはもう、ガーロたちしかいない。

「どどど、どうしよう! どうしよう!」繰り返していた。

 魔王さまのからだが、ひとまわりおおきくなったように見えた。

 いや、なったよう、ではなかった。魔王さまのからだが巨大化している。

 轟音を立てて崩れ落ちる城の瓦礫のなかで、ガーロは息を吞んでそのすがたを見た。


 魔王アガレスは、魔力を集中させていた。

 自分のその肉体が、すさまじい速さで再構成されているのが分かった。

 これだ、これだよ!

 足が玉座の壇上の床にめり込んだ。肩が魔王の間の天井にぶち当たった。

 魔王アガレスは巨大化していた。

 魔王一族に伝わる秘伝の強大化魔術、大魔神変天アルティメット・ギガノンであった。からだをどこまでも大きくし、力は何百倍にも拡大する。しかし、ただ大きくなるだけなので、実際の戦争では攻撃魔法のほうが有効なわけで、これまでほとんど使われることがなかったのだ。

 これなら、いけんじゃね?

 天井を突き破った。

 おっと、このままだと城を粉砕してしまうな。

 アガレスは、壇上から降りると、王の間の壁を突き破って、外に出た。

 そこは、タエが腰をさすっているその目前であった。

「ひあっ!」

 アガレスは一瞬、ビビった。だが、立ち直った。

 だ、だいじょうぶだ。おそるるに足りんぞ!

「巨獣よ! よくぞここまできた! だが、ここまでと知れ! この魔王アガレスが相手だ!」

 タンカを切って、もういちど魔力を練った。

 

 ガーロはそのすがたを見た。

 ぎりぎりと、鋼鉄をねじるように筋肉が盛りあがり、ふくれあがる。関節の骨が人体のそれとは違うものになって巨大化していく。両手足の爪がドラゴンのそれのように伸びてゆく。首が太く、背には背骨のような突起が。からだ全体が真っ赤に、まるで焼いた鉄のような色で光を放つ。髪が炎のように逆立っている。

 すでに体長は三〇メートルは超えている。

 伸びた牙のような歯のあいだから、吐いた息は灼熱を帯び、空気を焼いて燃えていた。

「あああ、あれは・・・」ガーロは震える。

 魔族の最終形態―――。

 大魔神。

 その頭が、こぶのように異様にふくらんでゆく。

 ガーロは知っている。魔族にはからだに魔力をたくわえる魔核というものがあるが、魔軍王クラスの魔族でもそれはタマゴほどの大きさにしかならない。だが、歴代の魔王の持つ魔核はその数十倍の大きさになるという。

 そして、不世出の大英雄、魔王アガレスさまは、なんとその魔核をふたつも持っているというのだ。

 そのあたまにふたつのこぶが、髪の毛を押しやって不気味にふくらみ、赤く焼けて大きくなる。すさまじい魔力をたたえた魔核にちがいない。

「おお、なんと巨大な・・・、やはりふたつも・・・」

 ガーロは感嘆する。言葉を吞んだ。

「おおお」

 ダリが目をみはっている。

 見開いている。

「なんか、キンタマみたい〰〰〰」

「ぶうっ!!」ガーロは鼻水を吹いた。

「ほらね? キンタマ」

「ば、ばかっ!! そんなこと言うんじゃないっ!!」

 クスっとした。いかん!

「あ、ガーロ、よろこんでる〰〰」

「よ、よろこんでない!」

「キンタマでよろこんでる〰〰」

「キンタマでよろこんどらんわ‼」

 こんな非常時に! コイツはいつになったら正気に・・・。

 そのとき低い声がした。

「だれか、なにか申したか?」

 ガーロは凍った。

 おそるおそる後ろを見た。

 魔神が、火炎をまとってこっちを見ていた。

「ぎゃああああ!! あああ、言ってません! 言ってません! なにも言ってませんん‼」

「そうか?」

「キンタ・・・」ダリが指さそうとした。

 ガーロはダリの顔を抱え込んで絞めた。

「殺すぞ! おまえ!」

「ぐへ」


 タエは、息を深く吸った。

 目のまえの敵は、大きくなってる。やけに強そうだ。みるからにヤバそうな雰囲気を漂わせてる。

 怖い。戦うのは怖い。これまでは、目をつぶってまっすぐ突っ込んでいったら、たまたまなんとかなったけど、今度はそうはいかないのかも。

 でも、戦わなきゃ。

 さっきは怖かった。Gも怖かったけど、ランスエリスや、リオラが死んじゃうのかと怖かった。そうだ、そうなんだ。自分はこんなに大きいけど、ほかのひとたちはそうじゃない。簡単に死ぬんだ。

 彼らを守れるのはわたしだけなんだ。

「あなたが魔王なのね!」

 呼びかけた。

「む?」

 その魔物はこちらを見た。真っ赤な血のような眼が、炎を帯びてた。

「巨獣よ、きさま、人間並みの意思があるのか?」

 言葉を放ったわけじゃない。考えを受けとり合っている感じだ。

「わたしは人間よ!」

「そのすがたは転生したためか。なるほどな」

「悪いけど、倒させてもうらうわ!」

「わっはっは、魔軍王を倒した程度で増長しおって、おのれの無力をさとらせてくれるわ!」

 やばい! やばい! すごく強そうだ。

 でもやらなきゃ!

 やるんだ! 

 決意した。

「ゆくぞ! キンタマ王‼」

「キンタマ王じゃねぇ!!」


 魔王だ! キンタマ王じゃねぇわ!

 だが内心、魔王アガレスはすごくビビっていた。

 なにこの巨獣! こわ! 顔がヤバいよ! めっちゃ強そうじゃね?

 ああ、くそ、でも、もうここまできたら引くわけにいかんよな。

 いくしかないよな。

 大丈夫だ。いける! 俺には大魔神変天アルティメット・ギガノンがある。

「きさまなど、この俺が踏みつぶしてくれるわ!」

 目を閉じて、ぬうん、と魔気を込めると、その体がさらに膨れ上がる。肩が、腹が、背中が、みるみる巨大化してゆく。脚が城の基礎を踏み抜いて、なお大きくなってゆく。

 すさまじい地鳴りと、破壊の音が、すべてを呑みこんで拡大してゆく。城を中心に、巨大な台風のような竜巻が起こっている。巨大な落雷が、天地をいく筋もつないで落ちる。

 雷鳴は天地を揺るがす。

 アガレスには、ものすごい勢いで巨大化する自身のからだの感覚があった。

 やったぞ、これならば、魔術防御も、魔術強化も必要ない。この圧倒的な力だけで、ほかの魔将たちがされたように、コイツをこの俺が踏みつけて圧死させてやるのだ!

 過去の魔王の家系で、この魔術での巨大化は数十メートルほどと伝えられている。だが、俺のこの魔力と、能力なら、その十倍、この巨獣の三倍はいけるはずだ。

 カッと目を開けた。

 周囲を見た。

「あれ?」足元にはなにもいなかった。

 巨獣は?

「どこだ?」

 踏んでやるぞ。

「おい」声がした。

「え?」

 視線を上げた。

 巨獣が見下ろしていた。

「あれ?」

 そこで気がついた。アガレスは、五〇メートルくらいにしかなれていなかった。

「もう、いいよね?」

 巨獣はそう言うと、アガレスを踏んづけた。


「ああああああ!!」

 アガレスは死にかけていた。

 まずい! まずい! まずい! なんでだ! なんでだ? なんでこうなった?

 ああ、魔力がない!

 あああ、そうか、異界魔法か! あれってそんな大量の魔力を使うんだったのか! ちくしょう、まずいぞ!

 巨獣はこんどは、どかんどかんと踏んづけていた。

 イタい! イタタ! 死ぬう!

 あ、あ、そうだ、俺の王勺、『魔神の王勺』だ! あれにつけられた魔石『賢者の石』なら、魔力を無尽蔵に復活できる。いまこそそれを使うときだ。

 それは?

 それは、そうだ王の間にもどらないと!

 アガレスは、顔を踏まれながら、王の間のほうを見た。

 そこには王勺を抱え持ったランスエリスたちが、スタコラと逃げるようすが見えていた。

「あ〰〰〰! それは俺んだ! こらあ!」

 すでに遅かった。


 ランスエリスは足を止めて振り返った。

 時間が残り少ない。

 魔王を倒したのち、王勺の魔石を使って彼女を救わねばならない。だが、魔王はまだ倒されてはいない。巨獣は魔王に乗りかかっているが、彼女にはそれ以上のことができないようだ。

 いま、ここで魔王を討てるのは、この聖剣アストロだけではないのか?

 そうするしかないのでは?

 ランスエリスは、持っていた王勺を魔術師リオラに投げ渡すと、地を蹴って走り出した。

 その手の聖剣アストロから、神偉の奇蹟エンチャントの光が放たれていた。


 魔王アガレスはそれを見た。

 あ、やめろ! くるな! よせ!

 魔力がないんだ! 魔法障壁を張れないんだぞ! それはやめろ! 聖剣はマズイ!

 いかん死ぬ! ああ死ぬ!


 やった、いける!

 タエはそう思った。

 むこうではリオラが、王勺らしいものを持ってる。魔石の奪取は成功だ!

 魔王を踏んづけたはいいけど、それからどうしていいか分からない。どんどんと、踏んでみたけど、簡単には死なないみたいだ。けど、殴り殺すとか、噛みついて殺すみたいな怖いことできるわけない。

 そう思っていたところへ、ランスエリスが駆けてくる。

 聖剣が光ってる。

 魔王は動けない。

 やれるんじゃない?

 この感じだと、いけるんじゃない?

 ああ。

 人間になれたら? 人間になったらどうしよう? まず、容姿はかえよう、そうしよう。すごい美少女がいいかしら、それとも美女系のお嬢様かしら。

 いいえ、普通の女の子で。でも、そこそこかわいい娘で。

 できるならあの彼と、騎士ランスエリスと、ほのぼの異世界ライフ。

 夢見るぐらい、いいんじゃない?


 その瞬間であった。

 魔王城の空に、白光が差した。

 一瞬、目がくらんだタエたちは、空を見上げる。

 それは転移魔方陣であった。その中空に、大司教ゾウラハウスが浮いていた。

「魔術師リオラよ、よくぞ賢者の石を奪い取った」

「あ、あなたが、なぜここに?」

 問いかけたランスエリスの足元に、魔術結界の矢が跳んで突き刺さる。

「その娘に石は使わせぬ」

「どういうことだ!」ランスエリスは進もうとしたが、結界に阻まれる。

「おおっと、動くでない」

 ゾウラハウスは中空から、顔を巡らせて、その場の全員のすがたをゆっくりと見た。

「ほうら、よく見よ。魔王も、リオラももはや魔力は残っておらぬ。巨獣は魔王を押さえたまま動くわけにはゆかぬ。この場でもっとも魔力をもっているのはこのわしだ。わしならば、いまこの場の全員を即座に殺すこともわけはないぞ」

「な、なにを言っているのですか!?」エリクシール姫が鋭い声を発した。

「黙って、その賢者の石をこのわしに渡すのじゃ」

「あなたはいったい・・・、なにをしようというのです!?」

「あいつは、もともと魔族との戦いなどどうでもよかったのさ〰〰」

 よろけながら、リオラが歩み出た。

 エリクシールは厳しい顔でリオラの顔を振り返った。

「どういうことですか? あなたは、あなたたちは・・・? なにをしようと?」

 リオラは悲しそうな顔でエリクシールを見返していた。

「もともと、この賢者の石の魔力だけでは、彼女を人間にはできるなんてウソさ〰〰。もとの世界に元のすがたで帰るなんてことも、もちろんできないのさ〰〰」

「きさま、知っていたのか?」ゾウラハウスが空から言う。

「そりゃね、チート魔術師だからね。ぜんぶ、あの男の罠なのさ〰〰」

「で、ではあの男はなにをしようというのです?」

「あの男はね、あきらめたのさ〰〰。世界をね」

「あきらめた?」

「そうだ」

 ゾウラハウスのその言葉と同時に、風が起こってリオラの手から王勺が空を舞い、そしてゾウラハウスの手に渡った。

 ゾウラハウスの足元に巨大な魔方陣がいくつも現れ、光り輝く。

 その手の王勺にはめ込まれた魔石がさらに、目もくらむ光を放っていた。

「い、いったい?」

 その王勺は、タエのほうに向けられていた。

「これは、魔獣化の魔術じゃ。この巨獣を魔獣化する異界魔術なのじゃ。この魔石はその鍵。これが魔獣化すれば、意思も思考も奪い去られる、破壊神となるのじゃ。すべてを破壊し、魔の瘴気に呑み込み、すべての人間も魔族も、すべての生命が滅び去るまで破壊をやめぬものとなる」

「な、なにを! 馬鹿な! なんという! なんのために、そのような!」ランスエリスが叫んだ。

「二千年前の戦い、そしていまのこの戦い。いくど繰り返しても、争いはなくならぬ! 人間も魔族も! この神が作りたもうた世界を汚し続けるのみ! 世界はいちど滅び、神にお返しするしかないのじゃ!」

「ば、ばかな!」

 地響きがふたたび轟き、地面がはげしく揺れ始めていた。

 魔石から放たれる魔力が、この地全体を揺れ動かしていた。

 風が暴風に変わり、すべてをなぎ倒す巨大な竜巻になってゆく。城を突き崩し、巨岩が地から浮き上がる。地鳴りは叫びのようになり、耳を聾する轟音に変わってゆく。

 ランスエリスたちは、地面に這いつくばって、風と振動に耐えるしかない。

「くそ!」

 進もうとしたランスエリスの足が、結界に阻まれる。


 タエは呆然とそれを見ていた。

 え?

 人間になれるんじゃなかったの? なれないの?

 じゃあなんでわたし、魔王踏んでんの?

 え?

 リオラって敵だったの? どうなってんの? どっちなの?

 どうすりゃいいの?

 魔獣化ってなに?

 からだが光ってきたけど、なんか変になってきたけど、どうなるの?

 えええええ?


「む?」

 空中にいたゾウラハウスはその異常に気づいた。

 この魔方陣は、わしが用意していたものとは違う。

 よく似てはいるが、基本構造がまるで別物じゃ。

 いや、こんな複雑なものは、あの禁書にも書かれておらなかった。

 どうしてそんな、いや、まさか。

「ははは、気づいたか〰〰」

 暴風にあおられながら、魔術師リオラが立ち上がっていた。

「魔獣化はさせないよ〰〰、ぼくが魔方陣を書き換えておいたさ〰〰」

「な、なんと! きさま! いつから?」

「最初からさ〰〰。あんな説明で納得するはずないさ〰〰。ぼくはバカじゃない」

「おのれ!」

 攻撃魔法を用意しようとしたゾウラハウスは、はっとして後ろに下がった。

 その中空を、聖剣アストロの剣先が聖偉を放ちながら振り下ろされる。

 ゾウラハウスのその手から、王勺が宙に飛んでいた。

 ランスエリスの剣であった。結界は、エリクシールの聖魔術によって破られていた。

「くそっ! ええい、なんということじゃ!」

 ゾウラハウスは中空に手で呪印を描く。

「ムダだよ〰〰! あなたにはこの魔方陣は解けないさ〰〰!」

「おのれ! どうにもならぬか! これまでか!」

 次の瞬間、ゾウラハウスのすがたは、転移魔術の光に消えていた。

「くっ! 逃げたか!」

「だいじょうぶだ〰〰! 王さまには連絡が届くようにしてある。なんとかなる。それより、こっちだ〰〰!」

 リオラは王勺を手に持っていた。

 魔石の光は止まず、暴風と揺れはさらに高まっていた。

「魔方陣はぼくが書き換えた! これは魔獣化の異界魔術じゃない! ぼくが編み出した転生魔術だ〰〰!」

 リオラはそのまま、タエのほうへ走った。

 巨大な魔方陣が、収斂するようにタエとリオラを包んでいった。

「帰るんだ〰〰〰〰!」

    

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