第3話 強敵

 寝室で眠っていた少女は大きな物音が聞こえ目が覚めた。

 慌ててベットから起き上がり、辺りを見渡すと見知らぬ部屋で困惑する少女。


「ここは……そうだ私はあの少年に助けられたんだ」


 山奥で高熱を出し意識が朦朧としている時に、颯爽と駆けつけたカルキ。

 その姿は見た途端、少女はとても安堵したのである。


「私を運んで看病までしてくれたんだ……」


 ベットの側には水が入った桶があり、先程起き上がった際に落ちたであろうタオルを見て看病してくれたのだろうと少女は思った。


「お礼を言わなきゃ……きゃっ!!」


 部屋のドアを開けようとしたその時だ。

 突如外から爆発音が聞こえ、驚いた少女だが意を決して部屋を出て玄関のドアを開ける。


「あれは魔物!!もしかしてあの魔物と戦っている!?」


 少女が目にしたのは灰色の翼を広げ滑空しながらクチバシから放たれる謎の球体。

 それが放たれた方向には、あの時助けてもらった少年、カルキが大きく横に跳躍し避ける姿があった。

 

 カルキが先程まで立っていた地面に球体が接触した瞬間、爆発が起きたのである。

 その爆発よりも、目にいったのはカルキの服がボロボロで血が流れていたのだ。


「やっぱり怪我してる!! あの魔物からやられたのね……何とかしてこれを渡さないと」


 少女は懐から取り出したのは、宝石のように美しい緑色の石だった。


☆☆☆☆☆


『避けてばかりではつまらんな!!』


 連続で放たれる爆発球を避け続けるカルキだが、全て完全に避けれているわけではなかったのだ。


(くそっ、あの一撃を受けてしまったせいで動きが鈍くなっている!!)


 少女が目を覚ます前に、ガーゴイルが飛翔して、先程の爆発球を放ったのだ。

 突然のことで反応が遅くなったカルキは致命傷を避けたが、身体には少なくない痛みを負ってしまったのである。


「はぁ……はぁ……そこだ!!」


『おっと……いいぞもっとも死ぬ気で抗え若き剣士よ!!』


 旋回するガーゴイルに斬撃を飛ばすも、それを避けられてしまい、反撃といわんばかりに爆発球を放たれる。


 それを避けたカルキだが、上空にはガーゴイルの姿がなかった。


『横がガラ空きだぞ!!』


「くっ……うがぁ!!」


 避けた先にはガーゴイルが待ち伏せして突進してきた。

 かろうじて反応が間に合い、剣で受け止めたが威力を殺しきれず、カルキは吹き飛んでしまう。


 カルキが吹き飛ばされたその方向は少女がいる家だった。


☆☆☆☆☆


 家の壁を突き破り室内で血を流して倒れ込むカルキ。

 力を振り絞り立ち上がるも、絶え間ない攻撃によって受けた傷が蓄積していき、さっきの一撃によって身体は限界に近かった。


「すごい傷……!! 待ってて今すぐ治すからね」


 そこに駆けつけたのは、ベットで眠っていたはずの少女が緑色の石を手にしてカルキの方に走ってきたのだ。


「なっ……こっちに来るな!! 今外には魔物がいる……ゴホッゴフッ……!!」


 カルキが言い終わる前に、咳き込み口からは赤黒い血が吐き出された。

 前のめりに倒れそうになるのを、今度は少女が受け止めた。


「傷なら治すことが出来るはず……!!」


 少女は手にしていた緑色の石に力を込めてカルキに向けると、緑色に光り輝くと傷ついたカルキの身体に変化が起こる。


「これは……!!」

 

 カルキは自分の身体の変化に驚き、その場で固まったのだ。

 それは、すさまじい速度で傷ついた身体が治っていくからである。

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