第3話 彼氏の家に行く
「へぇ、あんたが女の子」
少しふくよかなお母さんだった。
「初めまして新庄ことはと申します。森カズオ君とは七ヶ月ほどお付き合いさせていただいてます。ご挨拶が遅れて申し訳ございません」
「苦労するでしょ。この子アホだから」
うん、苦労はしている。確かに。
「部屋には近寄らないから、お好きに」
いえ、そんなこと。と、思ったが男の子の部屋に行くということはそういうことなのだ。
「お茶とお菓子くらいは持ってきてよ。ここで持っていくの怖いよ」
お母様がキッチンに置いていたお盆でカズオ君を叩いた。
「女の子に恥をかかさせない。あんたもいい歳よ」
「恥も何も勉強教えるだけだよ」
カズオ君はもう一度お盆で叩かれることになる。
「ちゃんとケーキ買ってくれたんだよな。ここの美味しいんだよ。お茶はペットボトルか、雑だな」
じゃ、ケーキ食べたし、勉強しようか。
そう言ってノートを取り出した。ドイツ語を出してきたらどういう反応をしよう。せっかく家にお邪魔したのに帰ることに、いやダメだ。
半年でお家デートはやや遅い。ゴム買っておいたら良かった。
今買いに行ったらおかしいもんね。どうしよ、口でって言われたけど、怖いな。
「どうしたの? まずは化学? 理系科目苦手だったよね」
ノートを覗き込むと日本語だった。ドイツ語じゃ無い。
「ドイツ語じゃない」
「へぇ、新庄さんもドイツ語読めるの?」
「読めない、日本語でお願いします。でも学校ではドイツ語だったのに何で?」
「学校は同時通訳の練習で家に帰ってから通訳が合っているかの確認でノートを別にして復習しているの」
うちの彼氏は真面目な努力家の一面もある。教え方も上手かった。
ワークで引っかかったところもこういう風に応用するといいよ。
「課題終わったね。お昼ご飯用意するよ。うどんでいい? 梅干し大丈夫?」
「うどんくらい私が」
「乾麺茹でるだけだからいいよ。部屋でゆっくりしてて」
皿うどんが出てきた脇にとろろと梅干し、醤油にレモン汁が用意してある。
「僕のおすすめはとろろ醤油レモンだけど梅干しもいいよね。苦手なら僕がトッピングもらうけど」
全部入れた。
「お腹空いてたの。いい勢いだよ。すごくグッド」
このテンションは男と私は致すことが出来るのか。それとも緊張をごまかそうとしているのか。後者だったら、めちゃくちゃ可愛い。
「何もすることなくなったね」
これは緊張をした口ではない。天然だもんな、本当に何もすることが無いのだ。
寝転がって天井を見た。白くてきれいな天井、見回すとプラモデルやCDが飾られている。この話をしよう。そう思って起きあがろうとした。
「疲れた? そんなところでは無くてベッド使いなよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます