第2話 彼氏の恋人繋ぎ
ここまでたくさんデートをした。服を選ぶのも手伝ってくれたし、荷物もたくさん持ってくれた。
「新庄さん可愛いから、一緒に歩けて本当に嬉しいよ」
会う度に褒めてくれる。
髪切った? 似合っているね。服は何を着ても可愛いね。今日は髪の毛ちょっと巻いたんだ可愛いね。
アホのノートを見たので、勉強を教えては言いづらい。流石にドイツ語は読めない。でも、ノートがドイツ語なだけで、教えてくれるのは日本語だろう。
「今度、勉強教えてよ」
言い出したのは次の年の五月だった。
そもそもここまでが長かった
「どこがいい?」
「え? どことは」
「喫茶店でもいいし、図書館でもいいよ」
まだ家といえる関係では無いと思った。
でもな、クラスの女の子は半年でそんな関係になっている。次のステップに行こう。
「その、家とか」
「誰の?」
「そのカズオ君の」
「面白味の無い普通のマンションだよ。絶対にクーラーが効いているところでする方がいいよ」
「ダメ?」
「そういうならいいよ。いつ来る?」
「その今日でも」
「分かった。お昼ご飯と晩ご飯食べるでしょ。お母さんに連絡するよ」
「そんなご飯は」
「もうメッセ送ったよ。帰ってきたよ、いいって」
お母さんは認めてくれるかな。彼女とか何回か連れて来たかな。
なんでいい匂いのシャンプー使わなかったのかな、臭くないかな汗かいちゃったな。やっぱり。
地下鉄に乗ろうとしたけど、ちょっと高めのヒールを履いてきたので、慣れていなくて急いで動けない。そういう事情を汲んだのかエレベーターで降りてくれた。
こういう時に恋人繋ぎをしてくれたらな、もっと楽しいのにな。ドキドキして大変だからそういうの厳しいかな。
電車は混雑していた。カズオ君は出来るだけ人混みに巻き込まれないように私を座らせて前に立った。
一駅前に次で降りるよ。
クーラーは聞いていたけど、熱がこもって暑かった。出来るだけ声を絞って言ってくれたのに胸はドキドキしっぱなしだ。
「降りるとスッキリするね。エスカレーターしか無いけど大丈夫?」
「うん」
すごい青春っぽい、すごい楽しい。自然に手を握ってくれる。今なら言える。
「恋人繋ぎしたいな」
「恋人繋ぎ?」
「その特別、なやつ」
カズオ君はしばらく悩んだ後に笑顔で分かったと言った。
慣れている風だったので、少しショックだった。そうだよね、中学の時に経験してるもんね。
手を握る力が強くなった。恋人繋ぎをする為に緩めた手をがっしり掴んだ。
「え、あの恋人繋ぎ」
「今、してるよ。普通は女の子の手は優しく握るでしょ。特別だから強く握るの。痛い?」
顔を見るとはてなでいっぱいだった。
うーん、そうか、そうなのか、恋人繋ぎを知らないとは思わなかった。
「地上に着くと家はすぐだよ。階段しかないな、手は外す?」
手すり持つから大丈夫。ある意味特別か。
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