第1話 彼氏はズレている
私の彼氏、カズオ君はちょっと変わっている。真面目なのでノートを取っている。それを見越してクラスのアホが「ノート見せてよ」と、いうとルーズリーフをカバンから取り出す。
「なにこれ」
「ノート」
「じゃなくてノートを」
「分かった、ごめんね。これじゃないよね分かったね。はい」
「そうそうこれこれ」
「恥ずかしいな」
昼休みを越えて放課後にアホがつかつかとカズオ君に向かってきた。
「この科目じゃない!」
「違うの?」
「何で、保健体育なんだ! 先生はそこまで説明しなかったのに図録とかついて、昼休みの読み物として困らなかったけどな!」
そういえば男子が静かだったな。
「俺が求めているのは数学Aと現国だ!」
「あぁ、ごめんね。これがAでこれが現国、他にも貸そうか?」
「マジで? サンキュー」
そうアホはカズオ君の席を後にした。
次の日、アホは戸惑いながらカズオ君の席にやってきた。
「ノート写すの早いね」
「なんで保健体育のノートはあんなにリアルなのに、他のノートは英語なんだ?」
「英語じゃないよ。ドイツ語、音楽やっているからドイツ語読めた方がいいと思って、日本語を同時通訳すると面白いよ。やってみなよ」
肩を落としてカズオ君の席をアホは離れて行った。
そう、こういう苦労を私もしている。
時間は半年前に戻る。ゴールデンウィーク明け、気になる男の子が出来た。
彼女がいるという情報も無かった。
理由は変わっているから、お弁当は自分で作っているらしかったが、カズオ君に「明日から作ってきてあげる」と、宣言をして頑張って作った。
初歩的なミスだったが、卵焼きに入れる調味料を塩に間違えた上にテンパってすぐそこにあった七味唐辛子を入れてしまった。コンビニによる時間があったので、お弁当は私が食べる用にすることにした。
お弁当は私が食べよう使った食材は悪くない。
お昼休みにはいと渡したコンビニおにぎり、ごめんなさい。作ったお弁当はあげることが出来ない。
「すごいね、新庄さんの家のお弁当はビニールで巻いてあるんだ」
「いやこれはコンビニのおにぎりで今日作ってきたお弁当は間違えて」
「見せてよ。その間違えたお弁当」
「その変だから」
「女の子が作ってくれる機会はお母さんくらいだから興味がある」
恐る恐る出したお弁当箱をカズオ君が開けた。
「美味しそう。食べていい?」
「その美味しく無いと思うよ」
「大丈夫、ちょっとだけだよ唐辛子。おいしいね。この味大好き」
嬉しくて気になるが大好きになった。
今すぐ告白したら、引かれるかな。
引かれたら嫌だな、ゆっくりと外堀をでも他の人に盗られたら嫌だ。
「あのね、カズオ君」
「なんで名前知っているの?」
そこで引かれてしまうのか。
「そのクラス名簿で」
「そうなんだ。人の心を読める人かなって思った。それで何?」
「私と付き合ってください」
「いいよ」
「え、その考えるとか」
「だって新庄さん可愛いし」
素直に嬉しかった。天にも昇る幸福度だ。
「いいの?」
「楽しみだな。どこに行きたい?」
「そのどこでもいいよ」
「困ったな、ならばどこに用があって、どこに付き合えばいい?」
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