9 ロクでもない大人の話
「一応報告だ、無事巻き込ませたぞウチの啓介を」
『そうか。悪いな……人様の家の子供を巻き込んで良い事ではないのに』
「気にすんな。寧ろアイツ的には蚊帳の外に居た方がしんどいだろ。でなきゃここまですんなり事が進むかよ」
啓介を灯に引き合わせた後、出雲雄介はそんな報告を通話先の付き合いの長い親友へと告げる。
影村光。
灯の父親で影村重工、及び影村グループのトップに君臨する……元守護者の男だ。
『厄介事に首を突っ込む癖は父親似か』
「厄介だと思ってねえのも俺に似てるよアイツは」
『めんどくせえが口癖だったキミが言うか』
少し明るい声音でそう言った後、光は静かに謝罪する。
『すまないな。この有事に表向きの仕事で飛び回るような真似をして』
「気にすんな。影村重工は危機から世界を守るだけの組織じゃねえ。お前には影村に関わる人間の生活を守る仕事がある」
それに、と雄介は一拍空けてから重い声音で言う。
「……俺達大人は端からロクでもねえ事に手え出してんだ。直接作戦に参加しようがしまいが、俺を含め全員揃ってロクでなしだよ。人として最悪のカードを切っている」
『……そうだな。最悪だよ、特に俺達は。子を持つ親としてあまりにな』
「……ああ。一切反論の余地もねえしする気もねえ。お前にもさせねえ」
『しないさ、俺も。できるわけがない』
そう、できる訳がない。
誰にもできる訳がない。
それだけ出雲啓介を影村灯の意思を無視してこの一件に巻き込んだ理由は歪でロクでもないものなのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます