疲れ果てた日常

「ちょっとお兄さん!私こんなん頼んでないわよ!!」

「すいません…」

「おい二宮、お前何回同じミスすやるんだよ」

「すいません……」


僕は日頃から怒られてばかりだ。都会に憧れを持ち、大学進学と同時に進出したがお金も足りず居酒屋でバイトをする。どうやら才能がないのだろう。毎回怒られては嫌になり半年も経たずにバイト先を転々としている。

「あぁ、今日も疲れた…」23時を回り帰路に立ちながら呟く。

「もしもーし 今日もお疲れ様!!」疲れ果てた僕にとっての今の生き甲斐は彼女 裕美 の存在だ。「ありがと〜 今日も怒られたよ」そう僕が言えば「それでも続けてる裕人くんは偉いよ!」と慰めてくれる。間違いなく彼女は天使なのだろう。

彼女と出会ったのは高校に入ってからだ。ポニーテールが特徴の彼女は元気で明るく、迷いのひとつもなさそうな透き通った目をしていた。もちろん学年の男子皆が口を揃えて「可愛い」というくらいに魅力的だった。内見はというとどこか抜けたところのある、いわゆる 天然 だった。そんな彼女のキャラが更に魅力を引き立てた。そんな彼女と付き合えるきっかけになったのはある放課後のことだった。課題となっていたプリントを忘れ教室に戻るとそこには彼女が1人黙々と作業していた。「何やってるの?」僕は思わず話しかけてしまった。「今度クラスの文化祭でする出し物の準備なんだけど…思ったより時間なくて」そう言いながら彼女の手は動き続ける。どうやら折り紙で作品を作っいるらしい。「僕も手伝うよ。」何となく彼女と話してみたかった僕は何も考えず口に出してしまった。「いいの?せっかく早く学校終わったのに」彼女は気にかけてくれた。でも、僕は彼女と話したい。という強い気持ちが勝っていた。「全然、帰ってもすることないから」「そっか(笑)」彼女が少し笑った。「可愛い。」 僕は彼女の笑顔に完璧に惹かれてしまった。しかし事件はここからだった。僕は手先が超がつくほど不器用だ。「折り紙、苦手だった。」僕は焦った。彼女にかっこいいとこ見せようと手伝ったがダサいとこを見せてしまったでは無いか。どうにか完成させた作品を彼女に見せる。「ふふふっ何これ〜。ゾンビ?」ショックだった 僕が作ったのは紛れもない 犬 だったからだ。「ゾンビって…」そんな会話から彼女と話すようになり気がつくと付き合っていた。

「今度いつ会える?早く裕人くんと会いたいよー」そう言われると電話越しではあるが顔が赤くなったのが自分でもわかる。

「再来週の三連休かなー 裕美に会うことを楽しみにバイト頑張るよ」

疲れきった僕にとって裕美は救いだった。

「早く会いたい。」

思った言葉がつい口に出てしまう。

「はやく再来週になるといいね〜」

そんな他愛もない会話が僕は好きだ。同じような言葉の繰り返しだが声を聞いてるだけで落ち着く。

「今度僕の地元に新しいカフェがオープンするんだって そこ行こーよ。」

「行きたい!!」

そんな話をしていると気づけば疲れが抜けている。

「明日も頑張るか」

疲れ果てた僕に新しい目標が生まれた。再来週は裕美との4年目の記念日だ。

「裕美の1番の笑顔をつくる。」

何気ない毎日の電話が疲れ果てた僕の1番の生きがいだ。

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