第6話 はじまりのおわり
宿に戻り、おれは自販機で買ったカルピスソーダを一口飲み、ロビーのソファに腰をかける。
まだ待ち合わせ相手は来ていないようだ。
おれはふと考える。
おれは高校生活を既に2回経験している。
いや、青井瑞稀としての人生を2回経験しているのだ。
しかし1回目と2回目は、普通の進学校に通い、それなりに楽しながら高校生活をおくっていた。
1回目は平凡に生きたから2回目では後悔しないように全力で全てに取り組んだ。
だが、1回目も2回目も明らかに今の人生より簡単だった。
なぜおれが人生を何周もしているのか、なぜ1回目と2回目は断然簡単だったのか、一体誰がこんなことをしているのか。
今のおれには希望が一切ない。唯一の楽しみはこのゲーム感覚で進められる高校生活だけだ。
もしかしたら永遠に人生を周回し続けることになるかもしれない。じゃあ今のおれは一体なんなのだ。
そしておれが出会った時から感じている違和感の正体。
「ごめんなさい。少し待ったかな?」
おれは思考を止め、待ち合わせ相手である黒川渚の方をみて答える。
「1人の時間も悪くないものだ。」
これは本心だ。
「そっ。とりあえず今日はお疲れ様。みんなには成瀬さんが作戦の説明をしてたけど、どうせ考案したのは青井くんだったりする?」
「その根拠を出すんだな。」
おれはなんとなく理由が気になった。
「直感ってやつかな。」
キリッとキメ顔をしている黒川。
「で、本当の理由は?」
おれは容赦なく聞く。
すると黒川がはぁとわざとらしくため息を吐き応える。
「青井くんが河村くんや成瀬さんと話している姿をたまたま見ちゃったの。それで確信したって感じ。」
面白くなさそうな顔をしている。
「もしかしておれのことが気になってずっと目で追ってたのか?」
おれはからかうようにきく。
「当たらずとも遠からず…って感じかな。うん。」
黒川がボソッと答える。
きっとこれは恋愛感情とやらでおれのことを目で追っていたわけではないのだろう。
おれも“そうしていた“からな。
おれは少し考えてから切り出す。
「おれとお前はどこかで会ったことがあるか?」
入学式と同じように問う。多分向こうも同じことを考えているだろう。
「言ったはずだよ。そのことについては、考えても無駄。追求しても意味ないよ。」
言葉とは裏腹に黒川も諦めきれないって顔をしている。
おれは飲み干したカルピスソーダの缶を捨て、もう一度ソファに座り、ただ前を向く。
ー今この人生で何をやっても、何かを成し遂げたとしても、おれはまた新たな青井瑞稀として4回目の人生がスタートするのだろうか。
なら、おれは今どこに向かっているのだろう。
ふと、黒川をみる。
うっすらと香るガーベラの匂いがおれの鼻をくすぐった。
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