第7話 光
冬になり川が凍っても春になると溶けていくように、クラス1人1人の間に生じていた見えない壁も徐々に崩れていった。
オリテンが終わり、かなり親睦が深まったおれたちは、授業が始まるまで適当に雑談をしている。
新たに4組に加えられた緑川も、かなり馴染んでいる。おれはというと、これまでの経験のおかげで友達作りに困ることは全くなかった。
では、ここでおれが今クラスで所属してるグループのメンバーを紹介する。
まずは成瀬と黒川。この2人は宝探しのあとなんやかんやで仲が良くなったらしい。正反対な2人でも、いや正反対な2人だからこそ会話を交わせば新たなインスピレーションを受けれるのだろう。
そして、もう1人の女子は“七海紅羽“。
紅葉のような美しい色をもつ髪の毛を頭の左右にまとめている。いわゆるツインテールというやつだ。高校生にもなってツインテールは子供っぽいとよく聞くが、3人のなかで1番身長が低く、いたずらっ子な七海にはとても似合っていると思う。
七海は成瀬とオリテンで同じ部屋だったことで仲良くなったらしい。
続いて男子陣だ。まずはおれ。そして河村。河村とはゲームのあと宿に戻った時仲良くなった。
そして最後の1人が”村上春樹“だ。いわゆるお調子者だが、意外にも成績は良く4組でも上位に入っているらしい。確証はない。
もちろん「友達」は人生において絶対に必要ではない。1人でいる方が何倍も楽なときもあるし、それが楽しいと感じる人もいる。だが、この高校においては何が起きるかわからない。何かあったときの“保険”としての役割を務めるのが友達の存在だ。
「…くん!青井くん!」
おっと呼ばれたみたいだ。とりあえず紹介は終わりだ。ちなみに、おれたちのグループは成瀬がいるこちで「光グループ」などと呼ばれているが、あまり嬉しくないものだ。
担任の桜が教室に入ってきたことで、おれたちは一斉に席をつく。
「じゃあホームルーム始めるね〜。まずはオリテンお疲れ様でした!最初のゲームなのによく頑張ったねみんな!3週間後には球技大会があるから頑張っていこう!詳細は来週のどこかで話すね〜!」
球技大会か…と心のなかで呟く。
退屈な授業を終え、昼休みはグループでご飯を食べる。
もちろん学食はあるが、1週間後まで開かないから今日はみんなで屋上で弁当を食べることにした。
1番最初に口を開いたのは七海だった。
「球技大会めっちゃ楽しみだね!バスケあるといいな〜。」
球技大会や体育祭が近くになると教室は二極化する。
一方は運動が大好きでソワソワしている。しかしもう一方は運動が苦手で毎日憂鬱な顔をするようになる。
七海、河村、村上はさっきからソワソワしている。黒川と成瀬は少し退屈そうな顔をしているな。
「青井くん、それ自分で作ってるの?!」
成瀬が驚きを隠せないといった表情で聞いてきた。
「一応料理はできるようにしている。一口食べるか?」
じーっとこちらを見ていたからそう聞くと、成瀬は顔をぱぁーっと明るめておれのたまご焼きを頬張った。
「うんま〜!」
自分で作ったものを他人が美味しそうに食べてるのをみると嫌でも嬉しい気持ちになるな。
ふと、右にいる黒川をみると黒川の弁当もおれのと引けをとらないほど豪華なものだった。
それから1週間が経ち、すっかり学校にも慣れてしまった。今の高校生の流行りもある程度理解できた。
今日のホームルームで説明された球技大会の詳細についてまとめてみよう。
まず種目は「サッカー」「バスケ」「バレー」の3つで1人1つしか参加できない。
球技大会は2日間で行われ、1日目はグループ戦でそれぞれの学年から1クラスずつ選ばれ計3チームで1グループになる。うちの高校は12クラスあるから4グループでき、2日目は1日目の上位2チームがトーナメントに出場する。
1年4組は、2年4組、3年3組と対戦することになっている。(グループ3)
トーナメントで優勝したクラスには150ポイント、準優勝で75ポイントとなる。
しかし、グループ戦で敗退してしまうと50ポイント減点だ。
今4組は150ポイントで2位に君臨している。今回の球技大会では思ったより点数が動きそうだな。
以上で説明は終わる。
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