第3話 たからさがし

 宿につき、テストを受け、入浴、そして夕飯を終わらせたおれたちは宿のミーティングルームに集まっていた。案の定、クラス委員長は柳澤か成瀬の二択に絞られ、成瀬が譲ったことで柳澤が委員長になった。成瀬は副委員長だ。

早速と言わんばかりに柳澤が口を開いた。

「明日のために早く寝て体を休めることも大事だけど、ゲームではクラスの団結力が必要だと僕は考えている。だからもっと仲良くなれるようにレクを考えた。」

クラスのみんながおーっと控えめに歓声を上げた。いくら貸切とはいえども、夜に騒ぐにはマナー違反だ。

レクか。妥当な判断だとおれは思う。

「レクの内容は、宿全体を使った宝探し。客室や一般の客が入れないようなところにはもちろん宝はおいてないよ。制限時間は45分。ちなみに、宝は1等〜5等までのくじだよ。大体20枚くらい配置させてもらったけど1等が入ってる保証はできない。あと、これから“男女”2人ペアになってやってもらうから。みんな楽しもう!」

おい今さらっととんでもないこと言ったぞ。

それに1等はグワム旅行券か…

2等も中々にすごいものだ。景品が豪華だと必然的にみんなのやる気も上がっていく。

さて、ペアをどうしたものか。残念ながらおれにはまだ友達と呼べるような存在が誰1人としていない。

おれはしばらくその場で待機することにした。


 それから10分くらいがたっただろうか。気づけばミーティングルームにはおれと黒川しか残っていなかった。普通に考えれば、あまり物として2人が組むわけだが、なぜか2人とも自分から声をかけれないでいた。おれたちはメロンパンの仲だろ。


 そんな沈黙を破ったのは、おれのスマホの着信音だった。ポケットからスマホを出し、ディスプレイに目をやるとそこには「成瀬七海」の名前が表示されていた。

『もしも〜し、青井くん』

「何か用か、成瀬」

黒川が不思議そうな顔をしている。

『急に申し訳ないんだけど青井くんペア決まってる?』

「恥ずかしながらまだ1人だ。」

『そっか、じゃあ私と組んでくれない?いやさぁ、私のペアの子が腹痛で部屋に戻っちゃって。このまま1人で宝探しするのもなんかなーって感じで。』

「わかった、なら“グループ”を組もう。ロビー集合でいいな?」

おれは言葉に含みを持たせて言い放った。

『了解した!』

成瀬は気づいていなさそうだな。

さてと、

おれは一息ついて、さっきからこちらを見つめてる少女に近づく。

少女は、なぜか口を尖らせながら、こちらより早く切り出した。

「青井くんがもうすでに私以外の異性と連絡先を交換しているとは…。なんだか裏切られた気分だわ。」

「いつからおれが仲間だと錯覚していた?」

ちょっとふざけてみる。

しかし黒川はそれをガン無視して続ける。

「私と青井くんと成瀬さんで“グループ”を組むんでしょ?早く行こ。」

おれが成瀬と“ペア”を組んでたら、どうするんだよ…と心の中でボソッと呟く。

おれと黒川はミーティングルームを後にした。


 ロビーで待機していると成瀬がやってきた。

成瀬はおれ“たち”をみてキョトンと首を傾げている。

「言っただろ、“グループ”を組もうって。」

「いや分かるかーい!でもいいや!人数多い方が楽しいもんね!よろしくね、黒川さん!」

「う、うん。よろしく、頼む。」

よろしく頼むってなんだ。

真逆に位置するような2人。

成瀬の出発進行〜!という掛け声と共におれたちの宝探しがスタートした。

ちなみにおれは、3等の「人をダメにするソファ」がめちゃめちゃほしい。


 それから30分後、おれたちはミーティングルームに再び集まっていた。結局おれたちはくじを一つ見つけたものの収穫は5等の「メモ帳」のみ。

おれはそのメモ帳を適当にポケットの中にしまったが成瀬は元々ペアだった“近藤翔”にあげていた。

そんなものプレゼントされても困るだけだろ…と密かに心の中で呟く。

結局1等を当てた生徒もいなかったようだ。

他のペアも結局は自分たち以外のペアと一緒に回ったりして仲良くなったようだ。

結果的には大成功だな。

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