専門基礎 大陸史I 講義録(教室 704)

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第一講

専門基礎 大陸史I 講義録 (教室 704)

第一講

                         講師 ヤン・ロバート


 諸君、こんにちは。この科目は大陸史Iだ。もし教室を間違えた者がいたら移動したまえ。今回は初回とのことで自己紹介、評価方法等を軽く述べたのちに本講義で行う内容の概説に入ろう。

 さて、私はヤン・ロバートという。研究室は12C、オフィスアワーは不定期なので質問があれば中央教育部に言ってアポの予約を入れてくれればいい。

 評価方法に移ろう。評価方法に関しては、出席も何も求めない。テストを行うつもりもない。君たちはこれまで教司機の授業しか受けていないだろう。彼らは間違えない。だがそこに魂が揺さぶられる授業があっただろうか。私はここで君たちの魂を強く揺さぶろうと思う。そしてこれは教司機にはできない授業内容だ。おっと、安心したまえ、諸君。大学には中央の統制は及ばない。ここではどんな研究だって発言だって認められる。

 話がそれた。評価方法は毎度講義の感想を出してくれればいい。別に出さなかったからといって君たちを落とす気もない。また、出席できなかった回については、講義録を教育部が勝手に作成して公開しているだろうから好きに読みたまえ。

 続いて授業内容に移ろう。今、このイリステレア大陸は一つの共同体として平和に存在している。だが、昔から一つだったわけではない。ちょうど二百年前、大戦が起きた。それ以降、我々は全体を一つの国家とし、機械による徹底した管理システムを導入した。約四百年前には、この大陸には八つの国があった。この講義では、八国分立時代について独自の科学的な実証、文献調査の結果を踏まえて講義していく。講義スタイルとして、一方的な語り口調、そしてそれらはどうしても想像が膨らんだ形になることを事前に断っておく。ただほとんどは独自の私の研究に基づき、主な部分は歴史的に正しいものだ。

 また、そこの講義録を通して見ているであろう教育部。私は長年この時代を研究してきて気づいている。文献照会しかり、史学考証機しかり、お前たちは意図的にある人物を歴史から隠そうとしている。だが、絶対にあるべきピースが足りないのだ。私は本講義でそこまで踏み込む。歴史は一篇たりとも省かれるべきではない。そちらもすぐに公開するよう求める。

以上。次回またここで会おう。


講義終了(授業時間 12:04)

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