第九勤務目 ポイントカード多すぎね?

「あー!! もう無理だわ覚えらんねぇよ! 数多すぎんだよ。一つにまとめろってんだよ!」


 なにやら店長が大きな声をだしているのでデスクを除いてみたらデスクの上に大量のポイントカードが広がっていた。


「また店で使えるポイントカード増えたんですか?」


「そうなんだよ! しかもアプリもあるらしくてそれも聞かないといけないんだよ!」


「えー今だって五個ぐらいポイントカードありますかって聞かないといけないのにもっとめんどくさくないじゃないですか」


「俺が子供の頃はTポイントが主流だったんだけどここ最近聞いたこともないポイントが増えてきてるから一つ覚えるだけでもめんどくさいんだよなぁ。しかもスマホで見せる人も増えてきててレジでその画面出すまで時間かかる人多いしさぁ、マジでめんどくさいわ」


「そうですよね。特にファミレスは対応してるカードかなり多いですしね」


「そうなんだよ。しかもこっちがきちんとポイントカードあるかどうか聞いてんのに「持ってないです」って半ギレで言ってくる奴もいるしよぉ! こっちだって聞きたくて聞いてるわけじゃないっつーの!」


「よくいますね。聞いてないですって言われて支払いが終わった後に「やっぱりあったからポイントつけてくれ」って人も多いですしね」


「あれね! 無理に決まってんだろってかんじだよなー! レジで支払い終わってからどうやってポイントつけるんだよって感じだよ! 一回支払いキャンセルするしかねえじぇねえかよって!」


「しかもそういう人に限ってクレジットで支払いしたりするから余計に時間かかるんですよね」


「そう! それ! バイトくんよくわかってる! 飴ちゃんあげる!」


「ポケットから飴を出さないでくださいよ。おじさんのポケットから出てきた飴なんて食べたくないですよ」


「何でだよ! 食えよ! ……あっ! ひらめいたぞ!!!!」


「絶対に辞めたほうがいいですよ」


「まだ何も言ってねえよ! そうだよ! 俺のポイントカードを作れば皆から大人気になるはずだ!」


「俺のポイントカード?」


「そうだ! ここで働いてる女性スタッフ全員に俺のポイントカード略して店長愛してるカードを配布する!」


「全く略してないですし、そもそも店長アイシテルカードってなんですか」


「俺に愛してるって一回言うと1店長ポイントをプレゼント! で、10ポイント貯まると女の子は俺と食事に行ける権利をプレゼント!」


「なんだそれ!!!」


「100ポイント溜まったら挙式!!」


「絶対誰も使わないですよ!」


「うるせー! よっし! 今からポイントカード作って皆に渡していこーっと!」


 その後、店長はノリノリで店長アイシテルカードを作り始めた。


「できたぞー! 今から皆に配ってくるわ!」


「どうぞお勝手に…」


 当たり前だが、店長が渡していった店長アイシテルカードは全部キッチン横のゴミ箱に捨てられていた。


 よく見ると「アイシテル」の「ア」が消されて「シテル」の「シ」の後に「ン」が書かれて「テ」の「゛」が付いていたけど、店長には伝えないようにしてゴミ捨て場に捨てておいた。

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