第八勤務目 店長の風邪

「ぶぇーっくしょん! ずずずずずずっ」


「店長、風邪ですか?」


「ぞうなの、熱もさがんない」


「休んだほうがいいんじゃないんですか?」


「だっで…人がいないんだもん…」


「そうかもしれないですけど、このままだと誰かに風邪うつしちゃうんじゃないんですか?」


「俺の風邪をうつす…ってことは…俺の子種を相手に孕ますってこと…」


「何をいってんだこいつ」


「俺の菌を相手の細胞に溶け込んでいくってことだな…」


「やな言い方しないでくださいよ!!!!!!!」


「そう思うとこの菌は俺の子どもたちってことになるよな…」


「何を言い始めてんだこいつ」


「俺のすべての菌よ! ここに集えええええええ!!」


「店長! 風邪になっていつもより言ってることが危なくなってますよ!! ね! もう帰りましょ! 絶対休んだほうがいいですって!」


「俺だって休みたいよ! でもどうやってもシフト回らないんだもん!」


「店長が一人いないぐらいならシフトは大丈夫ですよ!」


「なにそれショック!!」


「いつも、みんな最初から店長はいないと思って仕事してますから正直問題ないとおもいますよ」


「体調悪いときに傷つくことぶっこまないでよ」


「だからもう帰りましょう。ね?」


「いや! そんな話を聞いたら余計帰れない! 全員に風邪うつしてから帰ってやる!」


「なんすかそれ!」


「えーい! ぶぁくしょん! ぶぁくしょん! ごほっ! げはっ!」


「うわあああぁ! 汚い! 汚いって! 唾が飛んできてるからやめい!」


「はははははっ! どうだ! 俺の菌で孕んでしまえ!」


「何を言ってんだこいつ!」


「よーし! 店内の奴らにも風邪をうつしてやるぜー!!!! ゲホッ! ぐぁ!」


「あっ! もーキッチンの方に行っちゃったよ…絶対皆からなにかされるに決まってるのに」


『うわっ! 何だお前ら! やめろ! いやーーーーー! お嫁にいけなくなっちゃう!!』


「ほらやっぱり…何かが起こってるよ…」


 少し時間が立ってから店長はキッチンの人達にロープで縛られて休憩室にぶん投げられて戻ってきた。


「おまえらー! 覚えてろよ!!!!!!」


「そりゃそうなりますよ」


「くそがぁ…」


「さ、もう帰りましょう」


「あぁ…そうするわ…」


 店長はロープに縛られたままズルズルと帰宅していった。


「本当に手間のかかる店長だわ…はぁ…くしゅん! …あ…」

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