第四勤務目 カップル喧嘩

「あらまぁ、まだやってるわ」


「店長、何見てるんですか」


「あれあれ」


「あーカップルが喧嘩してるんですね。もう一時間ぐらいやってるんじゃないですか?」


「よくやるよなー別れればいいのに」


「声が大きいんで周りのお客さんもほとんど帰っちゃいましたね」


「本当だよ。別れればいいのに」


「彼氏が浮気したみたいで彼女がキレてるっぽいですね」


「マジかよ。別れればいいのに」


「何回か浮気してるらしいですし本格的に別れ話になってるらしいですね」


「あのさー俺時々思うんだけどさ。別れ話って意味なくない?」


「何でですか? 別れたくないから話すわけですから意味はあるんじゃないですか?」


「意味ないね。浮気する男は全員突き指すればいい」


「店長、それは自分が彼女いないからやっかんでるわけじゃないんですか?」


「違うよ。俺は彼女がいるのに浮気する男が許せないだけだ。それにあいつがあの女の子と付き合ってるから俺に彼女ができないんだ」


「それは違うと思いますけどね…」


「違うね。あいつは彼女と浮気相手がいるわけだろ? そしたらこの世界に彼氏がいる女の子が二人減るわけだ。そうしたら俺の取り分が減るだろうが」


「あの人に彼女がいても浮気相手がいたとしても店長には回ってこないと思うんですが」


「お前は何もわかってないな。いいか? 世の中には彼氏がいる女の子と彼氏がいない女の子しかいないんだぞ? そして男の方も彼女がいる男と彼女がいない男しかいなんだ。わかるな?」


「深そうでクソほど浅いこと言わないでくださいよ」


「だから俺はあいつのせいで彼女がいないんだよ。わかるな?」


「わかりたくないですね」


「ちょっと声かけてくるわ」


「話がこじれるだけなんで辞めたほうがいいと思いますよ」


「いいや、悲しんでいる女がいるのに助けないなんて俺の信念に反する」


「変なところで男らしさを出さないでくださいよ」


「行ってくる!」


「あー…行っちゃったよ」


 店長が何か行ってるな。


 あ! 女の子のほうが店長にビンタした!


 男の方も店長の胸ぐら掴んでる…


 うわぁ…半泣きで戻ってきた…


「くそが…クソビッチが…」


「どうしたんですか。二人共めちゃくちゃ怒ってこっち見てるじゃないですか」


「告白したら怒られたんだよ!」


「はっ! どうして何でそんなことしたんですか!」


「浮気してんだから俺に彼女くれてもいいだろうがよ!!」


「そんなことあるわけないでしょうが!」


「はぁ! 意味わかんねぇし! だって浮気してるやつが悪いに決まってんだろう! 他の女と遊んでるのに「俺の女に手ですな」とか言ってたぞ! はークソクソ! これだから美容師は嫌いなんだよ! あいつらはチンコで物事を考えてんだよ!」


「あの彼氏美容師なんですか?」


「浮気する男なんて美容師に決まってんだろうが!」


「偏見しかないじゃないですか!」


「お前らもうけぇれ! 家でにゃんにゃんしてやがれ!!!」


「店長ー!!」


 その後、このカップルは店長の事を悪く言うことで仲直りして帰っていった。


 店長は店の前に大量の塩を撒いていた。

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