第二勤務目 メイドおばあちゃん

「てててて! 店長! あれなんなんですか!」


「なんだよ。バイトくん興奮していいAV女優でもみつけたのか? 良かったら教えてくれないか?」


「何を馬鹿なことを言ってるんですか! それよりも今、店に入ってきたら超ミニのメイド服来たおばあさんが接客してるんですけどあれは一体何なんですか!」


「あー、あれね。大丈夫、大丈夫、気にしないでいいよ」


「いや! 気になりますよ! 何なんすかあれ! キッチンの人に聞いたら渇いた笑いしか帰ってこなかったっすよ!」


「だってさーだってさー急に休むやつ多すぎてシフト回らないんだもん」


「だからってあれはおかしいでしょう! つか、誰ですかあの人!」


「母親」


「は?」


「だから俺の母親だって」


「あんた! 自分の母親に何させてんすか!」


「何だよ! 俺が悪いのか! 元々は仕事休むお前らが! あぁ! お前らが悪いんだろうが! あと店長にあんととかいうな傷つくだろうが!」


「それはすいません! に、してもあんなメイド服着させて働かせないでいいじゃないですか」


「仕方ないだろ本人が人生で一度はメイド服着てみたいって言ってくるんだもんよ」


「そうは言ってもお客さんもみんな困惑してますよ」


「大丈夫だよ。一夜の悪夢と思えば大抵の事は我慢できるからさ」


「ファミレスで悪夢見ることは基本的にないと思うんですが…」


「本当は山本さんに着てもらうために買っておいたんだけどな、この前土下座してお願いしたんだけど宗教上の理由でメイド服は切れないって言われちゃってさ、しょうがないよな宗教上の理由ならな」


「普通に断っても諦めないと思われたんでしょうね」


「まぁまぁ、今日だけだから大丈夫でしょ」


「バレたらまた上の人に怒られちゃいますもんね」


「マジであれはおかしいとおもう」


「妥当だと思いますよ。いい大人が泣きながら謝るのはみてて面白かったですけどね」


「靴をやめようとしたら許してくれたもんな」


「プライドはどこに置き忘れてきたんですか…」


「母親の子宮にでも置き忘れてきたんだろうよ」


「今から一緒に働くんですから気持ち悪いこと言わないでくださいよ…」


 その後、僕は店長のおかあさんといっしょに働いたのだが「みーちゃんて呼んでね! そうじゃなかったらあたし振り向かないから!」と言われて殴りたい気持ちを抑えながらどうにか仕事をこなした。


 その夜はお母さんが動いてる時に時おり見えるパンチラを見たくないのにどうしても見てしまう男の性について考えながら眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る