第10話 自己紹介

「……いい?」


 ふと、いつの間にか立ち上がっていた三年生の女子が口を開く。


「あ、悪い悪い」


 來亜を茶化していた男子達が黙る。


「副部長の沼田ぬまだ和夏わかです。三年七組で、フルートを吹いています。好きなことは読書です。よろしくお願いします」


 長い黒髪をポニーテールにし、凛とした雰囲気の和夏はサッと頭を下げ、椅子に座った。


 そこから残りの三年生、二年生と続き、一年生の番になった。二年生の隣に座っていた女子生徒が立ち上がる。


たちばな晴花はるかです。五組で、中学校はバリトンサックスを吹いていました。好きなことはカラオケに行くことです。よろしくお願いします」


 ショートヘアがよく似合っている晴花が淀みなく話して座ると、隣の小柄な女子生徒が立つ。


「えっと……若林わかばやし柚月ゆずきです。三組で……吹いていたのはトランペットです。それから、隣に座っている深月みずきの双子の姉です。好きなことは、天体観測……とかです。よ、よろしくお願いします」


 長い髪をサイドテールにした柚月は少しどもりながら自己紹介をして深月を手で示した。


「さっきゆずが紹介してくれたけど、若林深月です。クラスは二組で、ホルン吹いてました」


「……」


 奏音はピクリと眉を動かした。


「好きなことは雑誌を見ることとか、コーデを考えることです! 皆と仲良くしたいので、よろしくお願いします!」


 満面の笑みを浮かべた深月は髪をお団子にしてシュシュで留めていた。


佐々木ささき茉奈まなです。クラスは二組で、チューバを吹いてました。好きなことは……映画を見ることです。よろしくお願いします」


 ボブヘアの右サイドをヘアピンで止めた茉奈はハキハキと自己紹介をした。


「……二組の秋山あきやまりんです……中学ではチューバ吹いてました……好きなことはクラシック音楽を聞くことです……よ、よろしくお願いします」


 華奢なフレームの眼鏡をかけた凛はチューバを吹いていたとは思えないほど小柄でセミロングの髪を内巻きにしていた。


「六組の木村きむら風花ふうかです! 茉奈と同じ中学で、楽器はパーカスです! 好きなことはぬいぐるみを集めることです! よろしくね!」


 長い前髪をながしたショートボブの風花はフレンドリーな印象だった。


「四組の村上むらかみ夕梨ゆうりです。吹いていたのはトランペットです。好きなことは流行りを調べたりとか、最近は恋愛リアリティーショーを見るのにハマってます。よろしくお願いします」


 鎖骨ほどまで伸びた髪を外ハネにした夕梨は背が高く、柔らかい笑顔を浮かべていた。 


 奏音はチラリと隣の裕真を見たが、裕真は相変わらずの仏頂面だった。


「同じく四組の久保くぼ明香里あかりです。トロンボーン吹いてました。好きなことは小さな子どものお世話かな。弟が三人いるので。よろしくお願いします」


 ロングヘアを低い位置で束ねた明香里はかけている眼鏡も相まって、知的な印象が強い。


「七組の伊藤いとう瑠海るみです! パーカスしてました! 好きなことは友達と話すことです! よろしくお願いします!」


 明るい印象の瑠海はポニーテールの先が少し巻かれていて、スカートを少し短くしていた。

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