第3話 顔合わせ

 翌日、僕は顔合わせがあるからと、呼び出しを受けた。


 そこは体育館二階の用具置き場のような場所で、ミオリさんと二人で会いに行くと、待っていたのは空手道着姿の女子生徒が二人。


 小柄で赤茶けた髪色の女子が部長の甘雨かんう愛実めぐみさん。

 明るめの金髪で爽やかな笑顔を向けてくる女子が副部長の永月ながつき桂里奈かりなさん。


 と、ミオリさんに教えて貰ったけど……。


 見た感じ、どちらも学園内で上位を争うような美少女だ。

 彼女たちなら、もっと男子生徒が群がって来そうなのに、他に部員がいないって…………怪しい。


 そんな感想を抱く僕に、先輩たちから声が掛かる。


「キミが八重波くんか。あたしは部長の甘雨愛実めぐみ。キミが入ってくれたおかげで部に昇格できた。これで部費もおりるし、助かったよ」


 は、はい……。


「キミのことはミオリから聞いているからね。無理な受け答えはしなくていい。少しずつ、八重波くんのペースで慣れてくれればいいから」


 おおっ、いい先輩だ。


「まあ、そっちの方が都合のいいこともあるし」


 ん……なんか聞こえたような……。


「いや、なんでもない」


 うわぁ、なんか隠してるよ、絶対。

 その見た目で腹黒ですか?

 騙されませんよ。


 なんて、僕が不審に思っていたのも束の間、今度は永月先輩が自己紹介を始めた。


「じゃあ、今度はわたしの番ね。私は永月桂里奈。ねえ、コウキくん。初めて見た時から気になっていたんだけど、キミ、私に飼われて見ない?」


 いや、のっけから何言ってんの、この人。


「あ、いや、すぐでなくてもいいんだ」


 やだ、怖い。


「ただ、コウキくんが先日亡くなった愛犬に似ていてね」


 いや、イヌかよ!。


「大丈夫、優しくするから。ちゃんとお世話もするし、お風呂も一緒に入ろう」


 えっ、マジで。


「うん、もちろん寝る時も一緒だよ」


 ぐぬぬぬぬぬ。


 そう来たか。

 いや、実に魅力的なお誘いだと思うけど、ペット枠かぁ。

 流石に僕も扱いがペットまで落ちるのは勘弁願いたいが……。


 そんな風に僕の心が揺れていると、我慢しきれなくなったミオリさんが口を挟んできた。


「もう、先輩たち。そうやってコウくんを揶揄わないでくれる。せっかく部に昇格するのに、やめちゃったらどうするんですか!」


「「プッ……プフ、ハハハ。いや~ごめんごめん」」


 ああ、やっぱりか……。


 うっかり信じちゃいそうになっていたけど、冗談だよね。わかってた。


「それに、コウくんも真に受けちゃダメだからね。この人たち、こうやって揶揄って遊ぶのが好きなんだから」


 は、はい。すみません。


 

 こうしてファーストコンタクトも済み、僕は無事に解放。


 もう仮入部期間に入っているから、明日から参加してってことだけど。


 ハァ……、恐るべし、空手同好会。

 

 キレイな女の人しかいないってだけでも緊張するのに、たったこれだけの会話で、すごく疲れたよ。


 まあ、全く声には出してないけど。


 でも、ほんとに冗談だよね。


 さっきのミオリさん、あの人たちと同じような目の光りをしてたけど、信じていいんだよね。


 


 なんて、思っていた時期もありました。





――――――――――――――


ここまで、お読みいただきありがとうございます。


現在この作品のPV数6と、悪夢をみております。

このままでは流石に寂しいので、露出を増やすため、予定を変更して夜にもう1話投稿したいと思います。

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